2012年度 新聞広告クリエーティブコンテスト

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2012年度「新聞広告クリエーティブコンテスト」結果発表

 日本新聞協会広告委員会が今年度「日本」をテーマに実施した「新聞広告クリエーティブコンテスト」には、全国から1,150作品の応募がありました。たくさんのご応募をいただきありがとうございました。本コンテストは、若いクリエーターの皆さんに、新聞広告の可能性を広げるような独創的で斬新な作品を作っていただくために実施しています。クリエーターの副田高行、一倉宏、児島令子、佐藤可士和、服部一成、前田知巳の各氏と新聞協会広告委員会の松本肇委員長、手塚泰彦、田村雄司、岡本哲の各副委員長の10人による審査会を経て、最優秀賞をはじめとする5賞5作品を決定しました。最優秀賞の「ニッポンは、つづく。」は、審査委員から「つづくは希望の言葉でもあり、『日本は続く。それであなたは、どうするの?』と見た人の心につぶてを投げているとも読み取れ、このインタラクティブな表現が広告としての力。シンプルだが深いものを感じる」「国旗そのものをモチーフとした、いろんな意味で強い作品。シンプルながらアイデアがあり、いちばん広告的に強い」と高く評価されました。

 審査会では、「入賞作品以外も多くの人に見てもらいたい」との提案があり、入賞5作品ならびに最終段階まで審査に残った12作品の計17作品を10月15日から25日まで(日曜を除く)日本プレスセンタービル1階(千代田区内幸町)で展示します。また11月からは日本新聞博物館(横浜市中区)で入賞作品を展示します。

入賞作品 テーマ:「日本」

※画像をクリックすると拡大されます。
[略号凡例]
AD:アートディレクション C:コピー D:デザイン Ph:フォト
最優秀賞
受賞者「ニッポンは、つづく。」
小林雅樹さん(ジオグラフィックス)
AD・D= 小林雅樹さん(写真左)
C= 神谷啓介さん
(電通ヤング・アンド・ルビカム/写真右)


○コメント
こんなご時世なので、日本をネガティブに語る言葉は世の中にあふれていますし、その反動なのか、声高にポジティブに煽(あお)る言葉も少なくありません。なんとか押し付けがましくなく、それでいてポジティブな気分になれないか、と考え始めました。「国」がつづくっていうのは、実は結構すごいことです。特に日本は世界的に見てもかなり長くつづいている国です。その事実に気づいただけでも、少し前向きになれる気がしました。この作品を応募後、ロンドン五輪が始まり、日の丸を見る機会が数多くありました。やはり何ともいえない高揚感があるんですよね。この広告でみんながじんわりとポジティブになってくれれば嬉しいです。ありがとうございました。


○プロフィル
1978年生まれ。千葉県出身。千葉大学工学部工業意匠学科卒業。ジオグラフィックス所属。アートディレクター。

優秀賞
受賞者「おちつけ 日本」

榎本弐輝さん(東北新社)

 

○コメント
今回、賞に選んでいただきどうもありがとうございます。

テーマが「日本」という重いモノでしたので、なるべくシンプルで力強いメッセージが良いのではと考えました。最近、日本は平静を失ってしまっているのではないでしょうか。こんな時代だからこそ、一度みんな落ち着いて日本や自分の未来について冷静になって考えてみてはどうでしょう。そんな思いを広告にしてみました。

「おちつけ 日本」を僕に代わって発言してくれた聖徳太子さまに感謝いたします。 ありがとうございました。


○プロフィル
1984年生まれ。ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーティンズ卒業。東北新社デザイン部所属。

コピー賞
受賞者「楽しみがある国」

歓崎浩司さん(電通)

AD= サンドウ タカユキさん(SANDO./写真右)
C= 歓崎浩司さん(写真左)

 

○コメント
この度はすばらしい賞を頂きありがとうございます。
日本を元気にするって、難しいテーマ。
でもたまたま目にとまった新聞広告で、
誰かが元気になれたら、それってすごいなって。
そこで自分たちが元気になれることって何だろうと。
これからいろんな出会いがあるよね、
その中の(もう出会ってる)誰かと結婚して、
子どもができて、家族になって。
仕事でも(がんばって)おもしろいことやって、
誰かに感謝されて、コンテストでも賞をとったりして・・・・。
あれ?そんな楽しみがあると、元気にならない?
そこで日本って国の楽しみを、素直に広告にしてみました。
2012年10月でいよいよ僕も30代。
この僕にも、まだまだ楽しみが待っている。


○プロフィル
1982年生まれ。兵庫県神戸市出身。慶応義塾大学総合政策学部卒業。電通入社後、営業局を経て、クリエーティブ局所属。コピーライター・CMプランナー。

デザイン賞
受賞者「ひとつずつ」
小柳祐介さん(電通)
AD= 小柳祐介さん(写真右上)
C= 山本友和さん(電通/写真左上)
Ph= 纐纈哲広さん(日本コマーシャルフォト/写真右下)
レタッチ= 阿部宏介さん(ワイアード/写真左下)

 

○コメント
前から、サイコロの1って日の丸だよなーと思っていましたが、
調べてみたら日本のサイコロだけみたいですね。
とあるオモチャ会社に勤務していた社員のイタズラからはじまったとか。

双六で1を出したときの残念な感じが出ないか心配していましたが、
ギュッと集めてみると、力強さを感じることができました。
まさに、一歩一歩、確実に、“みんなで。”ですね。

今回、頂いた賞もまず一歩。
私たちも、これからも一歩一歩、確実に前進していこうと思います。
ありがとうございました。


○プロフィル
1982年生まれ。フリーの映像作家を経て、現在、電通第4CRプランニング局所属。アートディレクター。

学生賞
受賞者「蓋をあける勇気、蓋をしない努力」
近藤千鶴さん(専門学校桑沢デザイン研究所)

 

○コメント
この度はすばらしい賞に選んでいただきありがとうございました。以前に作った作品を見直してみると、良くないところが見つかったり新しい発想が生まれたりして、作り直してみると前よりも良くなることがあります。そうしてみると、もう完成したと思ったものにも、実はまだ続きがあって、作り直すことで自分と向き合うきっかけにもなりました。それは掃除をすることや手入れをするのと同じことだと思いますが、それがなかなか面倒だったりすることもあって・・・・「臭いものに蓋をする」という諺(ことわざ)が浮かびました。蓋をあけること、蓋をしないことで日々新しいものに生まれ変わって成長していけたらと思っています。

○プロフィル

1991年生まれ。専門学校桑沢デザイン研究所昼間部総合デザイン科在学中。

【審査の最終段階まで残った12作品(順不同)】
「ON」代表=相原正和さん▽「あるいてみたり」代表=中野加奈さん▽「それ、本当に暗い話なんだろうか。」代表=廣瀬豊さん▽「きもちスイッチ」月森恭助さん▽「キミが代」代表=吉岡龍昭さん▽「懐かしい景色」代表=原田康代さん▽「ヨーロッパ」代表=長田亮さん▽「長生きの国で、何をしよう?」代表=伊藤みゆきさん▽「『日本』もいろいろ。」谷川恵太さん▽「いじめと戦うのは」代表=山形孝将さん▽「元気でね」代表=熊谷卓彦さん▽「ふくらまそうよ、ニッポン。」代表=遠藤誠之さん

2012年度新聞広告クリエーティブコンテスト審査会風景

審査講評
副田 高行 審査委員長
現在の日本をワン・メッセージで伝え切るのは不可能ですが、最優秀賞の「つづく」は希望の言葉でもあり、「日本は続く。それであなたは、どうするの?」と見た人の心につぶてを投げているとも読み取れる。インタラクティブな表現が広告としての力です。シンプルだけど深いものを感じました。オリンピックで感じたように、国旗が揚がると純粋にうれしい。日の丸のデザインではなく国旗を使ったところもよかったです。優秀賞はユーモラスな点が。コピー賞は最後の1行がいいですね。
一倉 宏氏 審査委員
日本と自分との関係を人間関係や恋愛関係に置き換えた作品があり、「いやなところもあるけど、やっぱり好き」というメッセージが印象的でしたが、今の若い作り手たちの実感でしょうか。「失われた20年」に育った世代でも、ポジティブで前向きな作品がたくさん見られました。最優秀賞は、国旗そのものをモチーフとした、いろんな意味で強い作品ですね。シンプルながらアイデアがあり、いちばん広告的に強いということで選ばれたと思います。
児島 令子 審査委員
日本をあらためて良い国だと思えたことが、今回審査してよかったことです。私は「日本を元気にする広告」という観点から、コピー賞に入賞した作品や、選外ですが高齢社会を「世界より10年長く恋できる国」と表現したものなど、短所を長所にする視点、だめだと言われていることも、前向きにとらえようとする作品を評価しました。入賞作品全部まとめて「日本」に対するひとつの答えのように思います。
佐藤 可士和 審査委員
難易度の高いテーマを前に、作り手が今までで一番もがいているのが感じられました。みんな今の日本には不満や問題意識を持っていて、他人事ではなく「自分事」としてなんとかしなきゃと思っている。その思いが伝わってきました。日の丸は、国旗の中でもものすごく独特で、強烈なアイデンティティーや美意識が凝縮されています。最優秀賞のはためく国旗に日本という国の本質を感じました。
服部 一成 審査委員
「日本」はテーマが大きくて難しかったと思いますが、最後には知恵をよく絞ったものが残りました。優秀賞は、このひとことを聖徳太子に言わせたところがうまいし、「おちつけ」が腑に落ちる人、落ち着いている場合じゃないと反論する人、いろいろな反応を呼びそうな点もいいと思います。学生賞は、2行のコピーにもシンプルな線画にもバランス感覚の良さがうかがえます。
前田 知巳 審査委員
応募作品はそれぞれ、つくり手によっては大きな日本観、あるいは等身大の日常観、実にいろいろなレイヤーでの「日本」がいろいろに表現されていました。結果、入賞作を並べて見るにつけ、例年以上に面白い個性が出揃ったのではないかと思います。中でも最優秀賞は「日本を元気にする」というお題の趣旨に実に鮮やかに、そして骨太に答えていました。「つづく」の中身は、きっとこの広告を見る人、各々の想像に託しているのでしょう。