新聞のニュース性を生かし話題を呼んだキャンペーン展開
九州新幹線全線開業告知キャンペーン
JR九州創立以来最大のプロジェクト、九州新幹線全線開業の告知キャンペーン。広告コミュニケーションの目的は、大きく三つある。一つ目は、開業によってお客さまに提供することができるようになる、機能的なメリット(移動時間の短縮)の訴求。二つ目は、料金体系の変化や新しい割引きっぷなどの商品情報の伝達。そして三つ目は、お客さまに、九州新幹線の開業という事象を、自分にも関係のあるもの、興味のあるニュースと感じていただくためのムーブメントづくり。
この目的を達成するため、JR九州では二つのキャンペーンを展開した。
時間短縮効果、商品情報の訴求─新九州起動キャンペーン
開業で大きく変わる交通体系、そしてその変化によりひろがる生活の可能性を表現するコピーとして、『新九州起動』をキャンペーンコピーとして採用した。自社メディアである交通媒体によるグラフィックの展開を基本とし、2011年6月以降、スポット的にテレビCMや新聞への出稿を行った。
○情報がニュースになるタイミングを狙った新聞広告
『新九州起動』キャンペーンでは、元旦および2月12日に新聞広告を展開した。どちらの広告にも共通した狙いは、九州新幹線の全線開業が記事として話題になるタイミングにあわせて広告を展開することにより露出量を増やすこと、また、興味をもって広告を見ていただくことである。
まず、元旦の広告について具体的に述べると、九州のメディアにとって、九州新幹線の全線開業は2011年の大きなトピックであり、元旦の新聞紙面でもある程度情報を取り上げてもらえることが予想された。パブリシティーで出て行く情報にタイミングをあわせた広告展開を行うことにより、よりインパクトのあるニュースとして九州新幹線の開業をお客さまに届けたいという思いから、開業日及び主要都市間の最速到達時分を訴求する広告を実施した。元旦~7日にかけて、同内容のテレビCMも展開した。
次に2月の広告については、開業日当日(3月12日)のきっぷの前売り開始にあわせて広告を展開した。テレビCMを「2月12日発売」→「明日発売」→「本日発売」と素材を改訂しながらオンエアし、発売開始日の2月12日に新聞広告を実施した。それまで、開業日の訴求に集中していた広告展開に加えて、前売り開始のニュースとあわせて商品情報を訴求していくという狙いだった。
より大きなニュースにするためのムーブメントづくり─『祝!九州』キャンペーン
冒頭に記述した広告コミュニケーションの目的の三つ目、九州新幹線の開業を、お客さまにとって、自身に関係のあるもの、興味のあるニュースと捉えてもらうための取り組みとして、「祝!九州」キャンペーンを実施した。
このキャンペーンは、コミュニケーションの目的達成のため、いかに新幹線の開業を“九州のみなさんと一緒になって盛り上げるか”ということをシンプルに突き詰めるところから企画を始めた。
○イベントを機軸としたコミュニケーション
キャンペーンは、「祝!九州縦断ウェーブ」というCM撮影イベントを機軸として展開した。このイベントは、“九州新幹線の開業を、みなさまと一緒にお祝いする”をコンセプトとし、(1)キャンペーンカラーであるレインボーカラーに特別ラッピングした試運転列車(新幹線)を、鹿児島中央駅~博多駅で運行/(2)新幹線に向かって手を振ってくれる方を公募/(3)車内より参加してくれた方々の様子を撮影し、テレビCM等の広告宣伝に活用する、という内容である。
2月20日の撮影イベントに向けて、1月初旬より参加者募集を開始した。募集は、駅および中吊りポスターやパンフレットなどの自社媒体に加え、テレビCMで行った。また、テレビや新聞等のメディアにも積極的に働きかけ、パブリシティーでの露出にも力をいれた。イベント告知自体が、新幹線の開業告知にもつながっていくという考えから、募集広告には積極的に広告予算を投下した。
○1万人以上の人々でつながった、九州縦断ウエーブ
イベント当日、事前に会場として準備していた場所に加え、新幹線が見える沿線には本当に多くの方が集まってくれた。当社がイベント会場で確認できたのが1万人。会場外にも、それと同じくらいの数の方が参加してくれたようだった。
参加した方々はおのおのに衣装やプラカードなどを準備し、新幹線に向かって、最高の笑顔で手を振ってくれた。鹿児島中央駅を出発してから、博多駅に到着するまで、参加者の笑顔が途切れることはなかった。車内にいた当社のスタッフは、その様子を見て思わず涙したそうだ。イベント終了後、撮影した映像素材を確認したが、そこには参加者の笑顔とか元気とか、人間が本来持っているパワーのようなものがつまっていて、我々の想像を超えた本当に素晴らしいものになっていた。参加してくれた方への感謝の気持ちで、胸が熱くなった。
参加してくれた方をなるべく多く紹介したいと考え、CMは31タイプを制作。3分のロングバージョンのCMも制作した。3月に予定していたCMは、震災の影響で数日の放送となったが(4月末~5月中旬に再度放送)、ユーチューブにアップされた動画をきっかけに、「祝!九州」キャンペーンは全国的な反響を呼んだ。
新聞広告に今後期待するもの
「細かい商品情報を伝えることができるマス媒体」および「広告コンテンツをニュースとして発信できる媒体」として新聞広告を今後も活用していきたいと考えている。
前者については、とてもベーシックな考え方だが、鉄道のきっぷや旅行商品の情報など、細かい商品情報や料金情報をお客さまに伝える媒体として、多くの情報を掲載できる新聞は適していると考えている。
後者については、そもそもニュースを伝える媒体である新聞で広告を展開するにあたり、記事として扱うに値する広告コンテンツを企画し、出稿していくことで、広告もひとつの「ニュース」として、パブリシティーも活用しながら、インパクトをもってお客さまに情報を伝えていくことが大切だと考えている。
九州新幹線を含め、ビジネスパーソン向けのサービスなど今後もキャンペーンごとに新聞広告の展開を考えていきたいと思う。
(鉄道事業本部営業部販売一課(宣伝)山元洋輔(やまもと・ようすけ))