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「合理化で調査報道が衰退」 立命館大の奥村教授ら 米FCC報告書を解説 マス倫月例会

 東京地区マスコミ倫理懇談会の7月度例会「米ジャーナリズムの危機を考える―FCCリポートを素材に」が7月30日、新聞協会会議室で開かれた。米連邦通信委員会(FCC)の報告書を基に、合理化策による米ジャーナリズムの衰退とその影響について、立命館大産業社会学部の奥村信幸教授と上智大大学院の国枝智樹氏(新聞学専攻)が報告した。

 国枝氏はFCCが昨年6月にまとめた報告書「コミュニティーにおける情報ニーズ」を解説した。米メディアは経営合理化を加速させている。他方、オンライン版記事執筆や動画ニュース撮影など記者の負担は増した。報告書は常に締め切りに追われて動き回る様子を、記者の「ハムスター化」と呼ぶ。編集局スタッフは、2006年の5万5千人から、10年の4万1600人へ1万3400人減少した。一方、同期間にオンラインニュースサイトが雇用した記者は大手12団体で88人にとどまり、受け皿になっていない。また、ピュリツァー賞が近年、調査報道、公共サービス部門への応募件数が減少し、受賞が特定の大手メディアに偏っていることから、調査・独自報道が衰退しているとした。

 ニュースサイトの広がりによる多メディア化で、広告収入は落ち込み、原稿料は減少している。報道を基にした批評、論評に主眼を置くニュースサイトは取材コストを負担せずにページビュー(PV)を集めており、「ジャーナリズムに投資しない方が合理的だと判断している」と分析。報道の質より速報性やPV重視の潮流があると述べた。

 国枝氏は、既存メディアの経営陣がニュースの投資収益率に着目する現状を強調。短期的な費用対効果が重要視されているという。

 奥村氏は、調査報道の生産性を低いとみなす経営コンサルタントが担当記者を整理対象にしていると述べた。その一例として、歯科チェーンの不適切な医療行為を特報しながらもテレビ局を解雇されたロベルタ・バスキン氏を挙げた。

 このほか、ワシントンのローカルテレビ局WUSAを紹介した。同局のニュース番組は、カメラ操作を全て機械化し、メーンキャスター2人のほかは数人しかスタジオに配置しない。人口60万人のワシントンを担当する撮影クルーは2班のみで、ストレートニュースをカバーしきれない状況だという。奥村氏は自身の放送局勤務経験を踏まえ、米国の状況が数年後に日本にも影響を及ぼす可能性があると述べた。

 また奥村氏は、若手記者を育成する上で、教育界とメディア双方の歩み寄りが必要だとの考えを示した。教育側にはジャーナリズムを体系化することを、メディア側には自社の報道スタンスを明文化し、外部に示すことを提案した。

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