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有罪神話に基づく報道は疑問 原田國男弁護士 刑事裁判報道の問題点語る マス倫研究会

 マスコミ倫理懇談会全国協議会の第11期1回「メディアと法」研究会が9月18日、新聞協会会議室で開かれ、原田國男弁護士が「99%有罪神話の崩壊と報道の在り方」と題し講演した。ほとんどが有罪となる日本の刑事裁判の現状を説明したほか、検察、警察の捜査情報に頼った報道の問題点を説明した。

 原田氏は40年余り刑事裁判官として一線に立ち続けた。2010年に退官するまでの8年間は、東京高裁で判事。その8年間で、一審で有罪とされた24の事件で無罪判決を下した。99%の事件が有罪となる日本の裁判では異例のことだが、事件の仕組みなどに疑問を感じ、慎重に審理した結果だという。

 その背景について原田氏は「今の検察や警察の捜査が、ズタズタになっている」と話す。足利事件や東電女性社員殺人事件などは、氷山の一角に過ぎない。客観的な証拠に基づかない、強要した自白のみによる起訴も多いという。にもかかわらず、なぜ日本で有罪判決が多いのか。原田氏は「冤罪(えんざい)とされた被告人が本当は罪を逃れた極悪人ではないか、といった世論がある。裁判官もプレッシャーを感じている」と語る。

 続けて、被害者感情として無罪判決に無念を感じるのは「その通り」だが、これを伝える報道も「99%有罪神話に基づいているのではないか」と問う。そして裁判の役割について、「被告人が真犯人であるかどうかは関係ない。裁判は客観的証拠に照らして有罪・無罪を判断し、有罪であれば量刑を決めるものだ。そうでなければ、『疑わしきは被告人の利益に』ならない」と強調。その上で「無罪判決を出すのが、裁判官の度胸の問題になってしまっている」現状を疑問視した。

 裁判員制度では、一般人も刑事裁判に参加する。映画「それでもボクはやってない」で描かれたように、誰でも冤罪被害者になり得ると同時に、誰でも冤罪加害者になるようになった。こうした中、事実認定に当たって重要なのは「一度は、被告人の言うことが本当なのではないかと思うこと」だという。

 メディアの報道に対しても、「概して被告人の"否認"に冷淡ではないか」と話す。ありふれた事件であっても、無罪判決には捜査への批判が含まれている。「こうした事件を伝えていけば、99%有罪神話も崩れていくし、検察への牽制になるのではないか」と述べた。

 また、法務省の「検察の在り方検討会議」委員も務めた原田氏は、昨年出した提言書について「良い方向性は出たが、一方で後退させる動きもある」と指摘。証拠の全面開示についてデメリットを強調する動きに言及し、「検察の不祥事という、従来想定していなかった事態があるにもかかわらず、不祥事を特異な事例にしてしまおうとしている」と語った。

 参加者からは、報道が司法に事案の徹底解明を求めることについてどう考えるかという質問があった。原田氏は「裁判は、事件の社会的背景といった真相を明らかにするものではない。刑事裁判にそのような機能はない。報道機関こそが、その役割を担うべきではないか」と答えた。

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