1. 日本新聞協会トップページ
  2. すべてのヘッドライン
  3. 新聞協会ニュース
  4. 「死なせないメッセージを」 毎日・澤氏 いじめ報道の課題を語る マス倫懇月例会

「死なせないメッセージを」 毎日・澤氏 いじめ報道の課題を語る マス倫懇月例会

 東京地区マスコミ倫理懇談会の10月例会が9日、新聞協会会議室で開かれ、毎日新聞東京本社社会部の澤圭一郎副部長が「いじめ報道の課題」と題し講演した。社会問題となって久しい「いじめ」の背景と、報道上の課題を説明した。

 澤氏は1989年に入社。長く教育問題を取材してきた。昨年、大津市の中学2年の男子生徒がいじめが原因で自殺したことから、あらためていじめに注目が集まっている。澤氏は「数年おきに社会問題になっている。引き金は子供の自殺だ」と語る。

 繰り返し問題とされながらも、なぜいじめはなくならないのか。澤氏は「学校の閉鎖性」などを要因に挙げる。ほとんどの教師が名刺を持たないなど、外に向かう意識がない点も指摘した。

 また、「ゆとり教育」が学力低下を招いたとの批判から、詰め込み教育への揺り戻しが起きており、子供たちに対する圧力が強まった。こうしたプレッシャーが子供たちの間で格差を生み、不満を生じさせている。澤氏は「自身が満足していれば、他人をそこまで激しく攻撃することはない」と話す。

 特にインターネットの普及で、いじめもより陰湿になった。匿名での中傷が飛び交う中、教師も発信者を特定できず、指導は困難だ。いじめが発覚すれば加害者すら実名をネット上にさらされ、それを消すこともできず執拗(しつよう)な攻撃を受ける。こうした中、マスメディアの役割は重要だが、学校の閉鎖性は変わらず、むしろ「取材を始めた20年ほど前よりも、マスコミへの警戒心は高まっている」と語る。

 大津市の問題では当初、学校名を報じるか否かで各社の判断が分かれた。毎日は少年法の精神に基づき、匿名で報じた。現実にはネットなどですぐに分かるものの、「どこで踏みとどまれるか」との面でスタンスを示す必要があったという。また、事態が沈静化した後、報道側のフォローや検証がないという問題点を示し、「メディアと学校、文科省が胸襟を開かなければならない」と述べた。

 参加者からは、いじめ問題をメディアはどう伝えていくべきかとの質問があった。澤氏は、「とにかく、死なせないとのメッセージが重要」と述べた。問題が収束すると、報道が途絶えてしまうという問題点を指摘した上で、同様の事態を繰り返さないためにも「報道機関として、息の長い報道を続けていくほかない」と強調した。 

ページの先頭へ