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個人情報保護法改正問題㊤ 範囲拡大で過剰反応さらに

報道との調整、論点にならず

 個人情報保護法改正に向けた動きが進んでいる。政府のIT総合戦略本部は6月24日、法改正に向けた大綱を決定、翌25日から意見募集を始めた。大綱には個人情報の範囲を拡大し、新たな過剰反応を生じさせかねない内容が含まれている。勧告や命令、立ち入り検査などの権限を持つ第三者機関の設置も盛り込まれたが、その権限が及ぶ範囲は明確でない。大綱作成の過程で報道側と調整することもなかった。法改正をめぐる取材・報道上の課題は多い。

 政府は新たなビジネスやサービスの創出、既存産業の活性化のため、個人の行動にまつわるパーソナルデータをもっと活用できるようにしようと、個人情報保護制度の見直しを進めてきた。

 大綱をまとめた「パーソナルデータに関する検討会」(座長=宇賀克也東大大学院教授)は、①免許証番号やパソコンのIPアドレスなど継続的に使われるID②指紋・顔認識データなど個人の身体的特性③移動・購買履歴などの行動履歴―を、取り扱い方によってはプライバシー侵害が起き得る「準個人情報」とし、個人情報の取り扱いに準じた義務を課して保護することを議論してきた。しかし、データの活用促進を妨げるなどとして経済界が反対、準個人情報の導入は撤回された。大綱には②の内容だけが残り、この中から「保護の対象となるものを明確化し、必要に応じて規律を定める」と記された。

 新聞協会が5月に提出した意見書の起草メンバーで、検討会の議論を追ってきた朝日の津山昭英ジャーナリスト学校顧問は「今後の法制化作業の中で、個人情報の範囲が拡大する可能性がある」と話す。範囲が拡大すれば、さらなる過剰反応や萎縮といった懸念も出てくる。津山氏は、これまでグレーゾーンだった顔写真の取り扱いが厳しくなるのではないかと指摘する。

 大綱では人種、信条、前科・前歴などの情報を、社会的差別の原因となる恐れがある「機微情報」と定めた。本人の同意なく取り扱うことを禁止するなどの慎重な取り扱いを検討するとしている。津山氏同様、意見書の起草メンバーで検討会を取材してきた日経の田原和政社会部編集委員は「どのような情報が規制されるか分からない。出身地さえも含まれる可能性がある」と懸念を示す。

 検討会の議論は、もっぱら商業利用の観点で、報道や表現の自由との調整は論点とならなかった。検討会委員の宍戸常寿東大大学院教授は「広い意味での情報流通という観点から、報道を含む公益的利用と保護のバランスについて、第三者機関で議論していくことを報道側は求めるべきだ」と指摘した。

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