公正報道に全力誓う 新潟市で新聞大会

軽減税率と産経記者起訴で決議採択も

 第67回新聞大会は10月15日、新潟市のANAクラウンプラザホテル新潟で開かれ、新聞協会会員社幹部ら490人が参加した。式典では、新聞への信頼を揺るがす事態が起きていることを踏まえ、正確で公正な報道に全力を尽くすことを誓う大会決議を採択。続いて、新聞への軽減税率適用を求める特別決議、産経新聞前ソウル支局長の起訴に抗議する決議を採択した。研究座談会では、新聞5社のトップが新聞の信頼回復に向けて意見を表明するとともに、消費税増税が経営に及ぼす影響や新聞広告の活性化などについて、フロアを交えて討議した。

 新潟市での開催は1993年以来21年ぶり3回目。新潟の小田敏三代表取締役社長が「新聞づくりの原点は、庶民が流す汗に報い続けることだ。新聞の発展に向け参加者の知恵を結集したい」とあいさつし、幕を開けた。続いて新聞協会の白石興二郎会長(読売)が「新聞は日本の文化水準を維持し、民主主義を支えることに長年貢献してきた。読者・国民の信頼を土台に、消費税増税への対応など直面する多くの課題の克服に向け、率直な意見交換をしたい」と呼び掛けた。

 新聞協会賞は、編集部門で野村周(朝日)、長南康一(河北)、銭場裕司(毎日東京)、芳見弘一(福島民報)、三村卓也(信濃毎日)の5氏、技術部門で北島匡氏(日経)、経営・業務部門で矢森真人(福島民報)、吉田真士(福井)の両氏が表彰された。

 猪瀬直樹前東京都知事が都知事選前に医療法人「徳洲会」グループから5千万円を提供されていたことをスクープした朝日の野村氏は「政治家の疑わしい点は国民に判断してもらうことが記者の使命だと思って取り組んできた。少しでも新聞が社会に必要だと認めてもらえるよう、地に足をつけて仕事をしていきたい」とあいさつした。

 400年前の慶長遣欧使節団を題材に、斬新な写真表現で東日本大震災の被災地を勇気づけた河北の長南氏は「より多くの人に使節団と連載企画を知ってもらえることがうれしい。読者に届ける1枚の手紙として、明日に向けた励ましになればと思いシャッターを切ってきた」と振り返った。

 認知症による行方不明・身元不明者問題を浮かび上がらせるキャンペーンを展開した毎日東京の銭場氏は「各地から『自分の家族も同じだ』と反響があり、問題の深刻さを感じた。地域に隠れた問題を掘り起こすことは大変だが、地道に取り組みたい」と話した。

 原発災害が多くの県民の命を奪っている不条理を伝えた福島民報の芳見氏は「記者は何度も遺族のもとに通って報道の必要性を説き、実名で伝え続けた。関連死をもう出させない決意で報道を続ける」と訴えた。

 新型出生前診断の臨床研究開始を機に、出産を支える社会の実現を訴えた信濃毎日の三村氏は「読者から共感する意見が数多く寄せられ、ネット全盛の中であらためて新聞の力を思い知った。声なき声を拾う新聞の使命を果たすことができた」と述べた。

 柔軟で拡張性の高い編集システムを構築した日経の北島氏は「クラウドを全面採用し自前主義を捨てたことがメリットを生んだ。他の新聞社にも成果を開示していきたい」と語った。

 復興に向けた思いを福島県民自らが国内外で語る「復興大使」を展開してきた福島民報の矢森氏は「県民とともに希望の道を歩む企業であり続けること、子供たちから福島の活力を発信すること、社員が福島に尽くすことを目指して取り組んできた」と強調した。

 里山の古民家に「コウノトリ支局」を開設し、豊かな自然を残す取り組みを行ってきた福井の吉田氏は「新聞と新聞社は地域を動かすことができるとあらためて分かった。地方紙は地域の課題から逃げないという覚悟が必要だと実感した」と話した。

 座談会に先立ち、日本文学研究者で米コロンビア大名誉教授のドナルド・キーン氏が「文字離れと未来~新聞の役割」と題して講演した。

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