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「命守る重要性伝える」 神戸・長沼隆之報道部次長 阪神大震災20年で講演 マス倫月例会

 東京地区マスコミ倫理懇談会の2月度例会が16日、新聞協会会議室で開かれ、神戸の長沼隆之報道部次長兼編集委員が「伝え続ける―阪神・淡路大震災から20年」と題し講演した。震災報道の目的は、自分の命を守る重要性を伝えることだと指摘。同社が震災から20年を迎えるに当たりまとめた、住宅の耐震改修義務化や防災の必修科目化など六つの提言についても説明した。

 神戸は、震災から約20年前の1974年、有識者会議で神戸市に直下型地震が発生する可能性が指摘されたと報じたが、社内外を問わず対策を真剣に考えようとする人はほとんどいなかたという。その後、防災報道に力を入れることのないまま地震が発生。震度6の揺れに耐えることのできない旧耐震住宅に住んでいた多くの人が亡くなった。その反省を踏まえ、震災後、住宅の耐震化の必要性を強く訴えてきた。「震災が発生する前に防災への意識を高めることができれば、犠牲を減らすことができたのではないか」という後悔を持ち続けているという。

 震災以降、新耐震基準の住宅が倒壊せず持ちこたえたことや、実際に住まいを耐震改修した事例を紹介してきた。しかし、県内での耐震化は、全国平均の3.9%に対して5.8%にとどまっている。「耐震化が自分や家族の命を守るということを繰り返し伝えなければならない」と強調した。

 地震は一瞬で多くの命を奪ったが、一命を取り留めた人々の暮らしにも深刻な影響を与え続ける。避難所の劣悪な環境から肺炎などを患った「関連死」、住まいをなくした人が暮らす復興住宅の高齢化、現在も心の傷が癒えないまま苦しむ人々の姿なども伝えてきた。

 同社が昨年10月に実施した遺族へのアンケートでは、4割が震災前の心の状態に戻っていないと回答。「経済はじめ、目に見える再建は進んでいるかもしれないが、心の復興は進行形だ」と説明した。

 今年、地元の新聞社として得た経験と教訓を、次世代と国内外に発信するための提言をまとめ、1月16日付朝刊に掲載した。

 災害が発生してから対策が講じられるなど遅れがちになる防災の見方を変え、「災害とともに生きる」という覚悟を持った上で社会の在り方を見つめ直すことを提案。全国の学校で広がりつつある防災教育をさらに深め、日常的な取り組みとするため防災必修化などを訴えた。

 神戸市では今、震災を経験していない住民が4割を超え、風化は進む一方だ。震災を報じる際、死者数などをあらためて示す必要も生じている。同社編集局の記者も3分の2が震災後に入社。当時を知る記者を講師に迎えた勉強会などで記憶を継承している。「20年が経過しても遺族にとって震災が風化することはない。震災は人々の記憶から薄れていくが、読者が自分の問題として捉えられるような報道を今後も心掛けたい」と話した。

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