1. 日本新聞協会トップページ
  2. すべてのヘッドライン
  3. 新聞協会ニュース
  4. 仏、表現の自由 限界は 「宗教批判、線引き難しく」 マス倫研究会

仏、表現の自由 限界は 「宗教批判、線引き難しく」 マス倫研究会

京大・曽我部真裕教授が講演

 第13期第4回マスコミ倫理懇談会「メディアと法」研究会が3月5日、新聞協会会議室で開かれ、京大の曽我部真裕教授がフランスにおける風刺画と表現の自由の限界をテーマに講演した。1月のシャルリエブド襲撃事件の日本での報道を見ると、フランスでの表現の自由は絶対的な原理のような印象を受ける。しかし実際は、法律の中で制限が設けられており、規制を受けない方が自由だという日本の考え方とは異なると説明した。

 フランスでは、「プレスの自由に関する1881年7月29日法」で表現や報道の自由が確立された一方、名誉毀損(きそん)などについての条項を設けるなど、表現の自由を制限しているという。日本で適法な表現でも、ヘイトスピーチや児童ポルノに抵触するとして規制の対象になるものもある。

 フランスでヘイトスピーチは厳しく規制されている。法規定されたのは1972年。当初は出生や、特定の民族・人種が規制対象だったが、性別や性的指向などにも広がったという。また、フランスでは名誉毀損や侮辱だけでなく、差別・暴力の扇動行為も処罰となるとの特徴があるという。曽我部氏は「ヘイトスピーチは厳しく規制されているが、宗教批判に対する規制はない。ヘイトスピーチと宗教批判の線引きが難しいところだ」と強調した。

 シャルリエブド襲撃事件の背景には、ムスリム(イスラム教徒)の増加とそれを受け入れ切れていないフランス社会の現状があるという。70年に100万人だったムスリムの人口は80年代以降、5倍以上に増えた。国民の約6割がカトリックだが、その次に多いのはイスラム教徒(約6%)だという。

 フランスでは2006年に、デンマーク紙が掲載した12点のムハンマドの画像の転載をめぐり、報道機関の判断が分かれたことがあった。シャルリエブドや大衆向けのタブロイド紙は掲載したが、ルモンドなどは掲載しなかったという。「フランスでもムハンマドの風刺画を掲載すべきだという人が多いわけではない。報道倫理的な悩みが各メディアにある」と曽我部氏は説明した。この件でシャルリエブドはイスラム系の団体から侮辱罪で訴えられたが、ムハンマドやムスリムに対する侮辱には当たらないとして一、二審ともに無罪となっている。

 出席者からは「ムハンマドの風刺画の転載をめぐっては、日本の報道機関でも判断が分かれた。名誉毀損など、法的リスクはあるのか」との質問が出された。これに対し、曽我部氏は「日本では法的な問題にならない。報道倫理の問題だ」と説明した。

ページの先頭へ