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「記念の集い」各地で開催 東京地区、ネット社会の役割討議

対立廃し共存の道探る

 新聞協会が地元の報道各社と共催する新聞週間「記念の集い」が、今年も東京、大阪、名古屋、福岡の4地区で開かれ、各会場で講演などの催しが行われた。東京地区は10月19日、東京・内幸町のプレスセンターホールで「ネット社会における新聞と放送の役割」と題したパネル討議を開催、344人が耳を傾けた。マスメディアとインターネットは対立するものではなく、それぞれの特性を生かし共存していくべきだなどの意見が出された。

既存メディア、存在感増す

 NHKの大越健介報道局記者主幹をコーディネーターに、毎日新聞東京本社の元村有希子デジタル報道センター編集委員、TBSテレビの金平茂紀執行役員、ドワンゴの川上量生代表取締役会長が登壇した。

 川上氏はネットの世界で、「既存メディアの力が強くなる兆候がはっきりと現れてきた」と紹介。「ネットのコンテンツは無料」との常識が広まり、グーグルやヤフーなどは、コンテンツを作るのではなく集めて発信することで成功を収めてきた。しかし、現在揺り戻しが来ているという。グーグルがユーチューブなどを傘下に置きコンテンツを作ったり、ネットフリックスのような有料サービスが人気を集めたりする状況が生まれ、ネットコンテンツは無料という常識が変わりつつあると指摘した。

 日本でも自社でコンテンツを作るネットメディアが増えてきたが、常に記者会見に出る、24時間ニュースを追いかけるといった取材体制がなく、「総合力で輝き始めたのが既存メディアだ」と話した。

双方向性をどう生かすか

 ネットを「伝送路」として考えるべきだと指摘したのは金平氏だ。「新聞は戸別配達で毎朝各家庭に届き、放送は電波で一斉に届くという特性があるように、ネットには瞬時に同時に配信する強みがある。それぞれの伝送路の良さがある」と述べた。

 マスメディアがネットを、逆にネットメディアがコンテンツを作りマスメディアを、それぞれ伝送路として使えば、「両者がよりうまく入り組み、関係を築くことで共存できる」とした。

 コーディネーターの大越氏はネットを便利な伝送路として使うだけでなく、その特性である双方向性を生かすことで新たな可能性が見いだせるのではないかと提起した。

 ニコニコ動画は、視聴者が残すコメントも楽しみの一つになっている。川上氏は「誰でも気の利いたコメントをつけ、動画を面白くできるという特性が受けたのだろう」と、人気の理由を分析。政治などの分野でネガティブなコメントが目立つ一方、それ以外の動画はポジティブで温かみのあるコメントが多いと話した。

 元村氏は、読者の知りたいことを紙面で報じ続けていくために、ネットの活用が重要になると指摘した。同社はネットからニュースの端緒となる情報を見つけたり、ツイッターを通じて取材の質問を募ったりする取り組みを展開している。「今知りたいことと知らせたいことが合致する新聞づくりを目指し、時代を捉えなければならない」と述べた。

 大越氏は、情報を主体的に摂取する人に対してでなくても、マスメディアがニュースを届けてくれると指摘。「ある意味『怠惰』な人間に寄り添うということも一つの役割だ」と話した。

求められる信頼ある情報

 ネットの持つ特性を評価しながら、マスメディアの役割を訴えたのは金平氏だ。
 国会前での安保法案への抗議活動は、ツイッターやフェイスブックなどを通じて情報が広まり、多くの人が参加した。ネットではさまざまな情報を共有し、現場の状況を誰もがすぐに発信することができる。

 金平氏はこうした点を認めつつ、ニュースを一方的に、大勢に一斉に届けるマスメディアの役割を強調した。東日本大震災の際、避難所で多くの人が食い入るように新聞を見ていた光景が強く印象に残っているとし、「信頼性のある情報を求めていることを強く実感した」と説明。「マスメディアは国民の知る権利を豊かにする、奉仕するという役割を担ってきた。報じるためには訓練、技術や経験が必要で、記者たちはずっと試行錯誤を続けてきた」と語った。

 ネット上には、一般の人が撮影・投稿した災害発生直後など決定的な瞬間の写真や動画も掲載される。元村氏は「出所が分からない情報があふれていることを踏まえた上で、メディアは一から確認作業をしている。手間がかかることだが、それこそが報道機関の生命線だ」と説明した。

 公共財としてのメディアの重要性を指摘する声も上がった。

 金平氏は、社会が営まれていくためには個人の欲望だけでなく公共的な価値が必要であり、既存メディアはそれを提供していると強調。その上で、ネット空間は公共圏になり得ていないと指摘した。「公共性をいかに担保するかは、今後、既存メディアにも、ネットメディアにも求め続けられる」と述べた。

 元村氏は、ネットも公共圏になり得ると指摘。「ネットを使うことで新たな関係も生まれたり、良い知恵が共有できたりする」と、ネットと新たな関係を築いていきたいと話した。

 大越氏は「ネットとマスメディアを分けて考えることは意味がない」と総括し、時代が変わってもジャーナリズムに求められる役割は変わらないと語った。

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 大阪地区では10月17日、大阪商工会議所国際会議ホールで陸上元日本代表の朝原宣治氏が講演した。360人が参加した。

 名古屋地区では10月21日、ウインク愛知大ホールで前駐中国大使で伊藤忠商事の会長も務めた丹羽宇一郎氏が講演。約750人が耳を傾けた。

 福岡地区では10月15日、芥川賞作家・小野正嗣氏の講演が都久志会館ホールで行われ、約450人が参加した。

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