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匿名化の進展に懸念 編集委が公開シンポ 改正個人情報保護法で議論

 新聞協会編集委員会は2月10日、公開シンポジウム「個人情報保護法改正と報道の自由―国民の知る権利は脅かされるのか」をプレスセンターホール(東京都千代田区)で開いた。110人が参加。個人情報保護法の施行後、情報提供者の過度な萎縮や情報隠しが広がっている。改正法でさらなる匿名化が懸念されるとして、取材現場の変化や報道機関が果たす役割について記者や研究者らが議論した。

 パネル討議には朝日東京の奧山俊宏編集委員、毎日東京・社会部の青島顕記者、武蔵大の奥村信幸社会学部教授、個人情報保護委員会事務局の山本和徳参事官が登壇した。東大大学院の宍戸常寿法学政治学研究科教授がコーディネーターを務めた。

 改正法をめぐっては、情報提供者の過剰反応による萎縮やさらなる匿名化が懸念されている。宍戸氏は「国民の知る権利が脅かされないためにどうすればいいか。報道機関の役割を議論したい」と問題提起した。

 個人情報保護委員会の山本氏は改正法のポイントとして匿名加工情報や、取得や第三者提供の際、原則として本人同意が求められる要配慮個人情報に関する規定の新設などを挙げた。「事業者が報道目的で報道機関に個人情報を提供した場合は法律の適用除外になる」と説明。同法への過剰反応で社会のさらなる匿名化が進むのは不本意であり、改正法の広報活動強化などで対応を図ると述べた。

 毎日東京の青島氏は取材の現状について「行政や自治体を含む社会全体が、情報の提供と非公開のどちらが公益にかなうか比較衡量していないのでは」と指摘。個人の生命に関わる緊急時など、本人同意がなくても第三者提供できる例外規定があるにもかかわらず、災害時の行方不明者の氏名などが公開されないと話した。

 改正法で新設された要配慮個人情報についても「報道側に罰則はないが、提供側にためらいが生じ、報道に影響するのではないか」との懸念を示した。 

何のための報道か発信を

 調査報道やデータジャーナリズムと個人情報は切っても切り離せない関係にある。朝日東京の奥山氏は個人の不動産登記、裁判記録などを検索・閲覧できる米国と比較して、国内で公開されている記録・文書は非常に少ないと指摘した。

 原発事故のテレビ会議を取材した際、東京電力から幹部以外は匿名とするよう求められたことを挙げ、「個人情報という言葉で思考停止に陥っていないか」と訴えた。これを受けて山本氏は「個人情報で思考停止に陥るのは本意ではない。利活用と保護のバランスが重要だ」と強調した。

 奥山氏は「報道機関への情報提供は正当な行為であり、行政処分はないとガイドラインなどに明記してはどうか」と提案した。青島氏からは「要配慮個人情報の範囲が、海外と比べて広いのではないか」との質問があった。

 山本氏は「ガイドラインなどに明記することが、よい方向に働くかどうか、慎重に考えなければならない」と回答。要配慮個人情報の範囲については海外の状況も踏まえて議論しているとした。政令などの策定にあたっては「報道界とも意見交換していきたい」と話した。

 奥村氏はネット社会で今後メディアに期待されることとして「公的な議論の場を育て、促進する必要がある」と発言した。ニュースの検証を可能にするアーカイブ化や、SNSで拡散されたニュースをユーザーが活用できるようにするなど、議論を支援する役割が求められていると説明した。

 「メディアを信頼して情報提供してくれる人がどれだけいるかが重要だ。必要なのは何のための報道か、どんなルールに基づいて情報を出しているのかを公開し、発信することだ」と指摘した。

 コーディネーターを務めた宍戸氏は、社会全体として個人情報保護法への理解が十分ではないと発言。報道の社会的意義も理解されるべきだとした上で、「情報化社会の変化の中でメディアの立ち位置が問われている」と話した。

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