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被災者取材の在り方議論 福島でマス倫研究会開く

 マスコミ倫理懇談会全国協議会の第14期第7回「メディアと法」研究会が5月19、20の両日、福島市のコラッセふくしまなどで開かれ、新聞・通信・放送・出版などから19社26人が参加した。初日は、東日本大震災で大きな被害を受けた宮城、福島、茨城各県の地元4紙の報告の後、4月に熊本地震のあった熊本日日を交え、被災者への取材の在り方や、記者の安全対策などについて議論した。

 登壇したのは、河北の松田博英報道部次長、福島民報の五十嵐稔社会部長、福島民友の白坂俊和報道部主任、茨城の斎藤敦報道部長、熊本日日の小多崇社会部次長の5人。基調講演した福島大学の天野和彦・うつくしまふくしま未来支援センター特任准教授も討論に加わった。熊本地震では益城町の一部避難所で取材活動が禁止され、取材活動への批判がインターネット上で広がるなど、メディアに対する厳しい見方が被災者・読者から出されることもあった。熊本日日の小多氏は、避難所での取材禁止について、避難者にトラブルを防ぎたいとの意図があったのではないかと分析する。メディア側にも勝手に個人宅の敷地に入るなど配慮に欠ける面もあったという。小多氏は取材先に何度も通い意図を伝え、丁寧に話を聞くことを心掛けたと話した。

 河北の松田氏は、震災で亡くなった大切な人に対する思いを取材する企画「あなたに伝えたい」の取り組みを紹介した。東日本大震災から5年を経ても「まだ話したくない」などと拒否する人も多く、取材対象を見つけるのに苦労している。しかし、応じてくれる人の話はどれも自分の気持ちを知ってほしいという強い思いを感じさせるという。「被災者と共に歩む覚悟が伝われば、取材に応じる人はいる」と強調した。

 司会を務めたTBSの神田和則コンプライアンス室長は、SNSの普及で取材の過程が読者・視聴者に可視化されていると指摘。「失礼のない取材を意識している」と述べた。

記者の安全確保に難しさも 教育を徹底、手引きも必要

 被害の全貌が見えず、二次災害に巻き込まれる危険もある中で取材する記者の安全確保の難しさも話し合われた。記者教育で徹底することや、マニュアルを整備する必要性も指摘された。

 熊本日日は夜間、行方不明者の捜索が続く南阿蘇村の土砂崩れ現場から、記者を撤退させた。記者は取材を希望したものの、突発事故の可能性も考え、安全を優先したという。小多氏は自ら安全を確保できるよう記者教育の段階から考え方を伝える必要があると話した。

 福島民報の五十嵐氏は、東日本大震災で津波警報が出たとき、記者に電話が通じていたら海の様子を取材させていたかもしれなかったと振り返る。現在は注意報でも沿岸には近づかせないようにしていると述べた。福島民友は原発事故当時、本社に放射線測定機を備えていたものの、取材にほとんど役立てられなかったという。白坂氏は「原発は大丈夫だろうというスタンスで取材していた部分もあった」とし、事故の想定が不十分だったと述べた。

 東日本大震災で津波が押し寄せた茨城県大洗町では、到達直前まで記者が取材していた。常総市などで大きな被害のあった2015年9月の豪雨の際も、水につかって取材する記者もいた。茨城の斎藤氏は「最終的に一人一人の安全管理に委ねられる部分もあるものの、管理マニュアルが必要だという教訓を得た」とした。

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