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【熊本地震2か月】熊本日日が結ぶ災害協定 定期訓練、有効性示す

輸送面の課題浮き彫り

 4月16日未明に発生したマグニチュード7・3の本震により、熊本日日は稼働中の輪転機が停止し、西日本と結ぶ災害援助協定に基づき印刷を要請した。熊本日日は紙面データを送信。西日本は試し刷りを実施し、輸送トラックを工場で待機させた。協定は発動されなかったものの、定期訓練が迅速な対応につながったと評価される。一方、輸送面では課題が浮き彫りになった。

 西日本と熊本日日は、阪神大震災後の1995年4月に災害援助協定を締結した。実効性を高めるため年2回程度訓練を実施してきた。整理、システムの実務担当者を相互に派遣し、面データの送受信や組み版も行っている。西日本の傍示文昭編集局総務は「訓練によって担当者の交流も密になるなど協定は成熟し、素早く対応できた」と振り返る。

 16日午前1時25分ごろの本震で、熊本日日本社がある熊本市中央区は震度6強を観測。運転中だった3セットの輪転機が停止した。約10万部の印刷を終え、残りの22万部を印刷する必要があった。

 停電は30分ほどで回復した。しかし、余震が続く影響で社員が工場内に戻れず、輪転機復旧のめどが立たなかった。最も近い西日本への支援要請を視野に入れる。午前2時19分に丸野真司編集局長が、西日本の遠矢浩司取締役編集局長に「災害協定に基づいて支援要請をする可能性があるため、準備をしておいてほしい」と打診した。

 午前2時56分に8ページ建て22万部の印刷を正式に要請した。1~4面、第1~4社会面の紙面データがインターネットを通じ、西日本に送信された。

 西日本は輪転機で試し刷りを実施。刷版を装着するなど印刷に備えた。新聞輸送のトラックも手配した。3台の輸送トラックが福岡市博多区の製作センターで待機した。

 熊本日日では午前3時ごろからの復旧作業が実り、輪転機1セットが午前4時12分に印刷を再開する。輪転機は低速で印刷を進める。午前5時57分に2台目の輪転機が再稼働した。午前7時10分に刷了した。西日本は、印刷終了まで待ち続けた。

 災害協定の発動寸前に直面し「輸送面の内容が詰め切れていなかったことに気付かされた」。丸野氏はそう話す。西日本との協定では代行印刷された紙面の受け渡し場所を、具体的に決めていなかった。大分合同との協定にもない。宮崎日日、南日本と締結する協定では、定められている。教訓として「被害を想定し、具体的な受け渡し場所を決めなければならない」(丸野氏)。

製作設備の地震対策 免震床・耐震補強が奏功

 熊本地震では、紙面制作や印刷面における災害への備えが発行継続に寄与した。断水が長期化した場合、井戸水の使用も視野に入れていた。

 熊本日日は昨年、システム更新に伴い、サーバー室に免震床を導入した。大きな揺れにもかかわらずサーバーが倒れなかったため、紙面制作に影響は出なかった。

 同社は本社内の1号館(1981年完成)と、2号館(同92年)にそれぞれ2セット輪転機がある。1号館は旧耐震基準で建てられた。「震度6弱で甚大な被害」と診断され、2012年に耐震補強をした。これにより、今回の地震で建屋や製作設備に大きな被害はなかった。

 輪転機の災害対策も功を奏した。昨年導入した輪転機は本震で停止したものの、断紙もなく素早く復旧した。輪転機内のフレームをつないで補強する「芯ずれ防止プレート」や、輪転機の基礎部分に耐震ゴムを設置していた。

 一方、印刷中に停止した輪転機のうち1セットはインキレールの一部が損傷した。同型の輪転機を使う朝日プリンテック川崎工場から部品の提供を受けて4月23日に復旧。4セットでの印刷が可能になった。このほかCTP1台が、上階の熱源室からの漏水によりぬれた。使用を一時中止して乾かし、異常はなかった。

井戸水の使用も視野に

 地震発生直後には断水になった。上水をためる地下の受水槽(140トン)は、20日の水道復旧の前には40トンに減少した。湿し水確保のため、節水に努めたほか、コンプレッサー冷却やトイレ洗浄に使う井戸水の活用も視野に入れた。前田直取締役印刷担当印刷局長は「井戸水の活用に向けホースをつなぐことや、バケツリレーで水を運ぶことも考えた」と話す。

 電気の復旧は早かったものの、熊本日日には輪転機を稼働させる自家発電機がない。前田氏は、停電の長期化への備えも課題に挙げた。

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