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ニュース媒体生き残り議論 WAN-IFRA世界大会

露紙編集長に金ペン賞

 世界新聞・ニュース発行者協会(WAN-IFRA)の第68回世界ニュースメディア大会が6月12日から3日間、南米コロンビアのカルタヘナで開かれ、世界各国のメディア幹部ら約700人が出席した。広告収入の減少など世界的に新聞を取り巻く環境が厳しくなる中、生き残りをかけたさまざまな取り組みが経営幹部から報告された。ロシア紙ノーバヤ・ガゼータのムラトフ編集長に「自由のための金ペン賞」が贈られた。

 大会は第23回世界編集者フォーラム、第26回世界広告フォーラムと同時開催。開会式のあいさつでWAN-IFRAのブルンネゴード会長(スウェーデン)は「各国政府はテロ防止に名を借りてメディア規制を強めている」と指摘した。パナマ文書へのアクセスを規制した中国や、文書の真実性を大統領が否定するロシアを例に、情報に自由にアクセスできる人は12年間減り続けていると述べた。

 続いて、ノーバヤ・ガゼータのムラトフ編集長に「自由のための金ペン賞」が贈られた。健康上の理由で出席できなかった同氏は「報道の自由と貧困を結びつけて考えるロシア国民は少ない。しかし、報道の自由が保障されなければ国民は汚職に走る政府を管理できず、ロシアは貧困から抜け出せない」などとビデオメッセージで訴えた。

 政府高官の汚職や人権侵害などを追及する調査報道で知られる同紙は、記者6人が殺害されている。2006年にはチェチェンや北コーカサスの報道で評価されたアンナ・ポリトコフスカヤ記者が暗殺された。

 大会では、さまざまなテーマのセッションが行われた。「未来への転換」では、経営幹部が生き残りをかけた取り組みを紹介した。

 10年間で1千万ユーロ(約11億3千万円)の赤字を計上し、10年に実業家らに買収されて以降、経営改革が進む仏紙ルモンド。ドレフェス最高経営責任者は、新たな潮流を生み出すことの重要性を強調した。11年以降、雑誌や本紙の付録、若者向け奨学生プログラム、読者による討論会などの企画を通じ、ブランド価値の創出を試みた。必要なのは「才能への投資」であると指摘。「経営者が記者の才能に投資し続ける限り、適切な人材は見つかる。新たな才能を迎え入れることが成功につながる」と述べた。

 カナダの仏語日刊紙ラプレスは、平日の紙版を廃止し、タブレット端末向けの電子版に移行した。クレビエ社長兼発行人は「紙版廃止は北米市場を厳しく研究した結果の判断だ。社に余力があるうちに変革に取り組み、魅力あるデジタル商品を開発することができた」と語った。タブレット向けにしたのは、質の高いコンテンツを提供するのに最適な端末であるほか、スマートフォンより買い換え周期が長く読者のつなぎ止めに有利なことなどを挙げた。読者の満足度を高め、広告単価の上昇にも結びついたという。

 このほか、SNSを通じた記事配信の在り方、仮想現実(VR)を活用した取り組みなどについて意見が交わされた。

 来年の大会は6月7日から3日間、南アフリカのダーバンで開かれる。

世界27億人が新聞購読 「社会との関わり」鍵に

 大会で発表された年次報告書「ワールド・プレス・トレンズ」によると、2015年における世界の新聞社の総収入は推計1680億(約16兆9千億円)だった。前年より1.2%、過去5年間で4.3%減少している。14年に続いて販売収入(900億ドルが広告収入(780億ドルを上回った。

 紙の新聞は全世界で27億人が読み、総発行部数も増えている。要因はインドと中国での部数増。両国の発行部数は世界全体の62%を占める。新聞紙による収入は、総収入の92%に達する。

 一方、デジタル収入は前年比で30%増加した。フェイスブックの記事配信サービス「インスタント・アーティクル」や、携帯端末でのウェブページ表示を高速化するグーグルの「AMP」により、ニュースサイト以外で配信記事の閲読が拡大し、デジタル収入に寄与することが期待される。

 WAN-IFRAのペイレーニュ専務理事は、記事をSNSなどで配信する際の核は「ソーシャル・エンゲージメント」だとして「読者に価値を提供し、社会との関わりを生み出すことがニュースメディアの生き残る手段だ」と述べた。

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