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【参院選報道を振り返る】読者の関心向上へ工夫 合区の地元紙

取材面で情報共有も

 今回の参院選で徳島・高知、鳥取・島根の4県に「合区」が導入された。県民・読者に戸惑いが広がる中、地元4紙は有権者の関心を高めるため課題設定したほか、取材面で協力した社もある。全国的に与野党の争点がかみ合わず政策議論が深まらないなか、各地方紙は地域が抱える論点を取材などに基づき提示した。

 「合区」が導入された地元紙からは1票の格差是正のためとはいえ、人口の少ない地方の民意切り捨てではないかとの声が上がる。高知の浜田成和報道部副部長は「隣県とは言え、歴史・文化、県民性や政治風土も異なる県同士を強制的に合区にするのは違和感があった」と話す。

 徳島・高知選挙区の候補者はいずれも徳島県出身。高知県内では「もう投票にいかない」といった声も強まった。高知は合区導入の背景と理由を改めて伝える、「棄権は合区追認」との視点を持ち投票所に足を運んでもらう―の2点に主眼を置いた。候補者の公約や横顔が分かる紙面作りを心掛けた。

 一方、焦点となった「3分の2」の意味について市内の100人に調査したところ、83%が意味を知らなかったとの結果が出た。浜田氏は「合区に焦点を当てるあまり、憲法や社会保障など政策課題へのアプローチが弱かった」ことを反省点として挙げた。

 徳島の梅田正人政経部次長も「県民が候補者に接する機会は従来の半分になる。読者の関心をどう高めるか」に心を砕いた。高知県内でも取材を重ねた。同県について読者の理解を深める紙面展開に努めた。徳島と高知は取材面でも情報共有するなど協力した。

 鳥取・島根選挙区は東西350キロ。片道5~6時間かかる地域もある。日本海の小谷和之政経担当デスクは「政治取材は日頃の人脈が物を言う。日常的なパイプが弱い島根での取材は苦労した」と話す。候補者は何を訴え、地域をどう捉えているのか。候補者の人となりも含め紹介するよう心がけた。小さなこともメモをあげてメーリングリストで共有するなど、記者同士の連携を強化したという。

 一方、鳥取県内に総局を持つ山陰中央の取材態勢に大きな変化はなかった。実際に争点化はされなかったものの島根原発を巡る政策を論点に提示するなど課題設定も工夫した。万代剛政経部次長は「合区による影響を意識した記事を書くよう指示した」。合区を経験した地方として「合区解消」を、今後も筋道を立てて訴えていく必要があるという。

野党統一の1人区

 野党4党が統一候補を出した1人区のうち、現職閣僚が落選した沖縄選挙区の地元2紙は、辺野古の新基地建設問題を最大の争点と位置付けた。明確な対立軸を示すのが難しかった山形や福島では、地域の現状をつぶさに伝えた。

新基地建設が最大の争点 沖縄

 沖縄では改憲問題も県民の関心が高いという。沖タイの与那原良彦政経部長は「生活にどう影響するのかを連載などで伝えた」と語る。子供の貧困問題も提示し、政治課題として取り組む必要性を示した。

 琉球は基地、憲法問題に加え、安全保障や米軍属による暴行事件を受け米海兵隊撤退の問題も論点とした。島洋子政治部長は「与野党の主張が異なる論点を一覧にするなど、意識してビジュアルを活用した」。公開討論会が開かれなかったことから、紙上討論を企画するなどした。

地域の現状細かく伝える 山形、福島

 山形選挙区で与野党候補が争点にしたにもかかわらず、環太平洋連携協定(TPP)は「有権者にとって論点とは言えなかった」。山形の峯田益宏報道部長はそう語る。昨年の大筋合意を受け「ノー」という選択肢が現実的ではなくなっていた。このため「明確な対立軸がなく、読者への判断材料を提供することに腐心した」。待遇改善を訴える保育の現場や、困窮に陥る母子家庭の声などを連載で取り上げた。

 福島県では与野党候補がともに県内の原発の廃炉と復興の加速を掲げた。福島民友の佐藤掌報道部長は「政策の違いを争点として取り上げることは難しかった」と話す。浜通り、中通り、会津の3地区での新有権者を含めた住民の声をルポ形式で伝えた。

 福島民報は原発の影響で医療や福祉の現場で人材確保が難しい状況にあることや、高齢化が深刻さを増すなど復興の進ちょくを連載で報じた。

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