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マス倫分科会 行政監視や安否確認に有効 実名報道 被害者のネット掲載で議論

 マスコミ倫理懇談会全国大会初日の9月29日、「なぜメディアは実名で報じるのか」をテーマにした分科会では、行政の動きのチェックや災害時の安否確認に実名報道が有効であるとの見方が示された。一方、一度インターネットに掲載された情報は消せないことから、犯罪被害者などの実名は慎重に扱うべきだとの指摘が出された。

 毎日東京の青島顕社会部記者、西日本の助清文昭社会部総合デスク、共同那覇支局の沢田和樹記者に加え、犯罪被害者を支援する高橋正人弁護士、メディア法が専門の一井泰淳弁護士が登壇した。

 高橋氏は、匿名報道を求める声が強まる背景には、メディアスクラムによる報道機関への不信があると指摘した。自主規制の在り方を再検討すべきと提起した。

 記者3氏は最近の事件・事故を例に、実名・匿名の報道でそれぞれどのような影響があったかを報告した。

 2015年9月の関東・東北豪雨で被害のあった茨城県常総市は、行方不明者15人を匿名で発表した。情報不足が影響し、全員の無事が確認された後も自衛隊が捜索を続ける混乱が生じた。

 青島氏は、市の個人情報保護条例で生命や安全を守るための情報開示は認められていると指摘。「災害時に安否を確認する上で、実名で発表する意義は大きい」と語った。

 熊本地震の担当デスクを務めた助清氏は、行政の対応を報告した。家屋の倒壊などによる直接死は実名発表だった一方、行方不明者や震災関連死は名前が伏せられた。

 西日本は5月19日付朝刊で、倒壊した家屋の下敷きになり亡くなった女性が、警察の検視を受けず「関連死の疑い」とされたことを実名で報じた。記事を読んだ県警がすぐに再調査に動いたという。助清氏は「実名で報道することで、行政を動かすこともできる」と述べた。

 沢田氏は、5月に沖縄県うるま市の女性が遺体で見つかり、米軍属の男性が逮捕された事件で、被害者を匿名に切り替えた経緯を説明した。当初、行方不明になった女性の公開捜査が始まった段階で実名で報じたものの、容疑者の供述で暴行が明らかになると、以降は匿名で報じた。「性犯罪被害者の尊厳や、遺族の感情に配慮した」との判断だ。

 それでも、ネット上では被害女性の写真が広がり続けた。沢田氏は、実名報道に公益性はあるとしつつも「ネット上で個人攻撃を受けたり、もてあそばれたりしかねない。取材対象に負担を強いることになり、葛藤がある」と話す。高橋氏は、ネットに一度掲載された写真や氏名を完全に消し去ることはできないとして「慎重に判断してほしい」と求めた。

 会場からは、7月に相模原市で起きた殺人事件で、県警が障害者施設であることを理由に被害者を匿名で発表したことを懸念する意見が出された。青島氏は、被害者や家族が匿名を望んでいるとは限らないとして、画一的に判断することに疑問を呈した。「メディアは実名報道がなぜ必要か常に考えるべきだ」と語った。

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