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ネット時代も変わらぬ役割 関西の新聞幹部、大学でパネル討論

 関西大主催の「関西から考える新聞のこれまでとこれから」と題したパネル討議が10月22日、大阪市の関西大梅田キャンパスで開かれた。朝日、毎日、読売、産経、京都、神戸の大阪本社代表や編集局長らが、関西から情報発信する意義や、インターネット時代でも変わらない新聞の役割について意見を交わした。大学生や高校生など約300人が参加した。

 全国紙の大阪本社にはどんな視点が求められているのか。朝日の前田史郎論説副主幹は、大阪では政府や中央省庁への取材がないぶん「発表に頼らず、徹底した調査報道を心掛けている」と話す。2010年の大阪地検特捜部の証拠改ざん事件では、報道が検察改革につながった。

 10月12日に東京で起きた停電は大阪本社版でも1面で報じた。前田氏は「いざという時に大阪で首都機能を引き受けられるか。複眼的に捉える必要があった」と振り返った。読売大阪の杉山美邦代表取締役社長は、関西地区で起きる問題を全国に提示することを役割の一つに挙げた。「人口減や少子高齢化など全国共通の問題を先取りしている面がある。処方箋を連載や提言を通じて示している」

 京都の布部拓男編集局長は「地域社会の意見をまとめること」と地方紙の役割を説いた。京都ではかつて、寺社の拝観料に課税する「文化観光税」の導入を巡り「やむを得ない」との意見と「信教の自由の侵害」との主張が対立した。布部氏は社内でも意見が拮抗(きっこう)していたとし「取材や議論を重ね『公論』を形成していった」と語った。

 神戸の織戸新代表取締役専務と毎日大阪の丸山雅也編集局長は、1次情報をつかみ、問題を発掘する新聞の取材力の高さを学生に説明した。14年、政務活動費を不正に支出したとして逮捕された元兵庫県議は「号泣議員」としてネット上で大きな話題になった。織戸氏は「神戸新聞の情報公開請求による調査報道が発端だった。ネットの情報は新聞社が出しているものが多い」と話した。

 丸山氏は、連載「無保険の子」で健康保険に加入しておらず病院で診療を受けられない子供が、全国で3万3千人に上る実態を掘り起こしたことを紹介。「『保険証を持っていない児童がいる』という養護教諭の発言を端緒に、取材を重ねた。プロの記者だからこそできる報道だ」と話した。

 産経の斎藤勉専務取締役は、一覧性に優れた紙の新聞は「精読しなくても、目を通せば社会の動きがだいたい理解できる」と述べ、参加した学生に新聞を読んでほしいと呼び掛けた。

若者に読まれる紙面を議論

 コーディネーターを務めた関西大の黒田勇教授は、熊本地震の取材で多くのメディアが被災地に集まったことに対し「1社が代表して取材した方が良いのでは」との意見がネット上で出たことを紹介。取材手法について問題提起した。織戸氏は「協力する場合もあるが、自由な取材・報道がなければ言論統制につながってしまう」と説明した。

 会場の大学生からは「新聞社が事件・事故の被害者の顔写真を掲載するのは、人権侵害ではないのか」との質問が出た。布部氏は、プライバシーに配慮しつつ「真実を報じる上で必要だと遺族や関係者に丁寧に説明している」と応じた。前田氏も「遺族が『帰れ』『来るな』と激高することもある。説明を尽くすことが記者の責務だ」と述べた。

 織戸氏は若年層の無購読を踏まえ「若い人に関心を持ってもらえる書き方を研究していかねばならない」と話した。かつて小学生新聞を熱心に読んでいたという学生は「記事も広告も団塊世代が対象ではないか。若者の意見も取り入れてほしい」と述べた。

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