1. 日本新聞協会トップページ
  2. すべてのヘッドライン
  3. 新技術で報道の価値向上 災害電子アーカイブを紹介 新聞製作講座

新技術で報道の価値向上 災害電子アーカイブを紹介 新聞製作講座

 第63回新聞製作講座は11月24、25の両日、TOC有明(東京都江東区)で開かれた。先端技術で新聞社のコンテンツ価値を高めた事例として、災害デジタルアーカイブが紹介された。印刷工場の災害対策をテーマにした講演で、予防的な投資で被害を最小限にとどめることの重要性が指摘された。新聞・通信社、メーカーなどから508人が参加した。

 首都大東京の渡辺英徳准教授は地図上に写真や動画、インタビュー記事などを配置したデジタルアーカイブを紹介した。新技術を取り入れて情報に新たな命を吹き込むことで、報道の価値をより広く伝えることが出来ると指摘した。

 渡辺氏は、広島への原爆投下について調べるうちにデジタルアーカイブの着想を得た。「画像検索で出てくるのはキノコ雲の写真ばかり。この雲の下で暮らしていた普通の人たちの姿を伝えたいと考えた」という。広島市の地図に、被爆者のの体験を追跡取材した中国新聞の連載記事や、時事通信がまとめた被害状況を重ね「ヒロシマ・アーカイブ」を制作した。

 デジタルアーカイブでは「記者が地道に集めた情報や、狙いが明確な報道写真の価値を生かせる」という。

 岩手日報「忘れない~震災犠牲者の行動記録」では、記者の取材を元に、津波で亡くなった1326人の動きを地図上に再現した。公開に併せて、岩手日報が紙面に詳細な分析を載せたことを高く評価した。「デジタルはより深い世界に誘導するステップとして有効だが、時間をかけて見せるには不向きだ。新聞の考え抜かれたレイアウトならば、じっくり読んでもらうことができる」と述べた。

 ヒロシマ・アーカイブは利用者の位置情報と仮想現実技術も生かした。スマートフォンを手に町を歩きながら過去の写真を見ることができる。人工知能で写真を自動的に着色する技術も有望だと述べ「分かりやすく伝える技術は進化している。それを活用することで、報道の価値をより多くの人に伝えることができるだろう」と強調した。

被害縮小へ予防投資を 印刷工場の災害対策で講演

 地震、雷害対策については、電気設備工事を手掛けるきんでんの島末紀之氏が講演した。「予防的な投資で被害拡大を防いでほしい」と呼び掛けた。

 比較的安価な予防策で熊本地震の被害を食い止めた例として、2013年に新聞とは別の工場で請け負った耐震化工事を挙げた。天井からつり下げた配電設備の揺れを軽減する補強で、費用は数百万円。「もし工事をしていなければ、復旧に数千万円を要する規模の被害に見舞われていただろう」と備えの重要性を強調した。

 災害時の非常用電源は、72時間分を確保しておくことが一つの目安になると指摘した。島末氏によると、東日本大震災では震度5強までの揺れで停電が起きた例は少なかった。震度6を超える揺れで停電が起きた場合でも、送電設備の被害などがない限りは3日以内に復旧したケースがほとんどだったという。企業の事業継続計画がおおむね非常電源の稼働時間を72時間としていることは「理にかなった判断だと思う」と述べた。

 近年、局地的な「ゲリラ雷雨」が増え注目が高まる雷害対策では、電子機器の重要性に応じて区画を分け、避雷器を設置することを対策の基本に挙げた。雷が建物を直撃しなくても、近隣への落雷や、雷雲により発生した高電圧の電流が電線、通信線を伝って建物に入り電子機器を破壊することがあるという。建物内の全ての部屋にある自動火災報知器が被害を受けやすいと述べた。

ページの先頭へ