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現場取材の足腰弱まる米メディア スマホ速報競争で経営難 NHK文研シンポ

 NHK放送文化研究所主催のシンポジウムが3月2日、千代田放送会館(東京都千代田区)で開かれた。米紙ワシントン・ポストのメディア担当記者であるポール・ファーヒ氏が、テレビ報道とマスメディアの現状について話した。大統領選の報道で放送局は大きな収益をあげたものの、現場取材に基づくリポートは減り、取材体制は弱体化していると述べた。選挙報道が業績に結び付かない新聞社は低下が顕著だという。背景にはスマートフォン向け速報競争の激化による経営体力の低下があると指摘した。

 大統領選はトランプ、クリントン両候補の激しい応酬が注目された。ファーヒ氏によると、CNNやCBSは選挙関連番組で収益を大きく伸ばした。ケーブルテレビの契約者数が大幅に増え、討論会中継のCM単価がはね上がったため。

 一方、現場取材に基づくリポートは減り、ゲストが解説するスタジオ番組が増えた。ファーヒ氏は「現場取材は費用がかさむ。解説番組は制作費が安い上に、視聴者の人気も高い」と要因を挙げる。

 しかしこうした番組作りは争点を単純化し「イエスかノーか」の二択しか生まれないと指摘。記者の陣容も不十分で、トランプ氏以外の候補への取材に手が回らなかったことも問題だったと述べた。選挙番組で得た収益を記者の配備に投資する動きはないという。

 取材体制の弱体化は〝選挙特需〟の恩恵がなかった新聞社で顕著だという。ファーヒ氏はその理由にスマホの普及を挙げる。速報競争が激化する一方、収益の大半を既存の収入源に頼る構造は変わっていない。このため経営難に苦しむ新聞社の記者削減が続いていると述べた。

 収益化の見込みがないにもかかわらず「ネットにニュースを提供する以外に読者をつかむ方法がない」という矛盾を認識した上で、ワシントン・ポスト紙は記者を増員し記事の質を上げることで生き残りを図っていると説明した。ただしオーナーのジェフ・ベゾス氏の資金力あっての方策で、全ての新聞社が取れる手段ではないとも語った。

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