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社会の不寛容と闘う ジャーナリズムの責務果たす【朝日阪神支局襲撃から30年】

 朝日新聞阪神支局に散弾銃を持った男が押し入り、小尻知博記者=当時(29)=を殺害し、犬飼兵衛記者(72)に重症を負わせた事件から5月3日で30年となった。渡辺雅隆代表取締役社長は追悼行事で「相いれない者を排除する風潮が強まっている。ジャーナリズムの担い手として闘っていくことを誓う」と決意を述べた。朝日労組は同日、「言論の自由を考える5・3集会」を神戸市で開いた。

 渡辺社長や後藤尚雄常務取締役大阪本社代表らは3日午前、広島県呉市にある小尻記者の墓を訪れ「ジャーナリズムの責務を全うする」と誓った。同日夜に阪神支局3階の襲撃事件資料室で開かれた小尻記者をしのぶ会にも吉岡一阪神支局長、襲撃時に支局にいた高山顕治秩父支局長ら約100人とともに参加し、黙とうを捧げた。

 小尻記者が襲撃時に着ていたブルゾンや座っていたソファなどを展示する資料室は一般開放された。併せて開いた「『みる・きく・はなす』はいま」展では事件当時の紙面や小尻記者の写真のほか、事件関係者に再取材した記事も展示した。吉岡支局長は「当時の捜査関係者も退職し、事件を知る人が減った。記者には事件を検証する最後の機会だと思って取材するよう伝えた」と話す。

 市民590人が資料室を訪れた。大阪府池田市の会社員、岡明成二さん(70)は「記者は市井の人の立場から真実を掘り起こす重要な仕事。もっと記事を書きたかったはずの小尻記者の無念を感じた」と話した。

 支局1階には拝礼所が設けられた。朝日によると、過去最多の約790人が弔問に訪れた。

 一方、支局前では朝日を批判する街宣活動が行われ、襲撃を肯定する声も上がる。2014年から始まった。このため、近年は警察による厳重な警備のもとで5月3日の追悼行事が行われている。朝日も普段は支局を施錠するようになった。吉岡支局長は「敵対する相手を一方的に攻撃する風潮が広がった。今こそ、社会の不寛容に立ち向かう言論の重要性に思いをはせてほしい」と話した。

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