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SNS利用は緊急時に限定、現場が基本 投稿者への接触は1人に 記者教育センターシンポ

 日本ジャーナリスト教育センター(代表=藤代裕之法政大准教授)は5月13日、「ソーシャルメディアを使った取材の手引き」の邦訳記念シンポジウムをはてな東京オフィス(東京都渋谷区)で開いた。SNSを取材利用する際の留意点を話し合った。見破りにくい虚偽情報もある中で、利用は最小限に抑え現場取材に重点を置くべきだとの意見が出された。ニュース素材などの投稿者への取材殺到を避けるため、接触する記者を1人に絞る必要性も指摘された。

 手引きは米のファクトチェック団体「ファーストドラフトニュース」が作った。投稿者と接触する際は「やりとりをSNSで完結させず、電話などで相手と直接連絡する」など実践的な助言を収録する。

 NHK遊軍プロジェクトの足立義則副部長は、SNS利用者に安易に写真提供などを依頼する傾向が強まれば、情報の正確さへの意識が緩みかねないと問題提起した。2016年5月の東武東上線脱線事故で、テレビ局が偽の投稿写真を放送したことを例に挙げた。「慎重な事実確認が第一。SNSの情報を報道に使うのは、緊急性が高く替えが効かない時などに限定すべきだ」と述べた。

 NHKは記者が投稿者と電話で話し「不審な点があったため使用を見合わせた」という。投稿者は事故を起こした電車に乗り合わせた際に撮った写真の中に、海外で起きた事故の写真を紛れ込ませていた。「嘘が巧妙化し、見破りににくくなっている」と指摘した。藤代氏も「可能な限り現場に行った方が結果的に早く、正確だという認識は報道機関の間でも強くなっている」と語った。

 投稿された写真・映像を報道で使う際、事件当事者のプライバシーへの配慮が要る場合もある。朝日オピニオン編集部の平和博記者は「使用の可否を見極めるには、既存メディアのノウハウが役立つ」と述べた。当事者が私人か公人かにより、氏名や顔写真の掲載を判断するといった報道機関の知見も「ネット全盛の今こそ重要になっている」との考えを示した。

 手引きは取材を受ける側の負担への配慮から、SNS利用者に接触する際の注意点として「取材者を1人に絞る」ことを挙げる。足立氏によると、同じ放送局の報道番組やワイドショーの担当者が同じ相手に別々に接触し、ネット上で「メディアスクラムだ」と批判を受けることがあるという。

 足立氏は「こうした反省を踏まえ、SNS対応を社会部などに集約する動きが出てきた」と紹介した。藤代氏は「取材手法を巡る大きなトラブルが起きる前に、自主的に対策を打つことが必要だ」と述べた。

偽情報は政治対立で増幅 不用意な拡散に注意を

 シンポジウムでは討議に先立ち、平氏が海外の偽ニュース動向を報告した。政治的な対立や混乱が深まると、偽ニュースを個人攻撃や広告稼ぎに利用しようとする動きが活発になると指摘した。藤代氏は、こうした意図が隠された偽ニュースに報道機関が安易に飛び付けば「メディアが拡散に手を貸すことになりかねない」と注意を喚起した。

 7日に決選投票があった仏大統領選では、グーグルやファーストドラフトニュース、仏メディアが共同で検証サイト「クロスチェック」を設け確認に当たった。3日に「マクロン候補の隠し口座の証拠」として文書が拡散した際は、サインの筆跡を照合するなどして「偽ニュース」と判定した。

 平氏は「政治状況が不安定になると、敵対勢力をおとしめる偽ニュースが広がりやすい。アクセス数を稼いで広告収入を上げようとする動きも出てくる」と指摘した。自民党政権が安定している今の日本では「偽ニュースがまん延する余地は少ないだろう」との見方も示した。

 藤代氏は「一見まともに見える海外ニュースサイトが、巧妙に偽ニュースを忍ばせる例もある。SNSやグーグルなどの広告ネットワークも組み込まれている」と述べた。今後日本にも影響が及ぶ恐れがあるとし「巧妙な偽ニュースに引っかかるとメディアが拡散に手を貸すことになる。利用には注意が必要だ」と述べた。

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