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【個人情報保護法と報道】実名の意義と責任 再検討を 取り扱う理由必要な時代 マス倫月例会で京大・曽我部氏

 マスコミ倫理懇談会全国協議会の月例会は5月23日、新聞協会会議室で開かれた。京大院の曽我部真裕教授が「『個人情報保護法とメディア』問題をあらためて考える」とのテーマで講演した。個人情報の取り扱いに常に正当な理由が求められ、インターネット上に広がる情報によるプライバシー侵害が問題となっていることを踏まえ、実名報道の必要性や倫理的責任を再検討すべきだと強調した。

 30日に改正個人情報保護法が全面施行される。曽我部氏は「今回の改正は暫定的なものだ」とみる。スマートフォンや交通系ICカードの普及に伴い人々の行動の蓄積がマーケティングデータとして注目されるようになった。今回の法改正で、個人を特定できないよう処理した「匿名加工情報」については本人の同意なく事業利用できるようになった。今後はこうしたビッグデータ分析に基づく営業活動がもたらすプライバシー侵害や差別に、個人情報保護制度論議の論点が移ると指摘する。「個人情報に関する本人のコントロールを重視する風潮が強まっている。これまではプライバシー侵害がない限り情報を扱えたが、取り扱いに常に正当な理由が求められる状況が生まれつつある」と指摘する。

 曽我部氏はこうした社会通念の変化に合わせ、実名報道の在り方を検討すべきだと指摘した。一度報じたニュースはネット上の掲示板やまとめサイトに無断で掲載され、拡散する。報道機関が一定期間後に自社のウェブサイトから削除した後も、拡散した記事は残る。「現在の情報環境の中で、報道機関がどこまで実名報道の責任を負えるのか」と問題提起した。

 最高裁は1月、ネット検索結果から記事の削除が認められるのは、プライバシーを公表されない利益が、記事の公共性を明らかに上回る場合に限るとの判断を示した。曽我部氏はこの決定について「検索事業者の責任は限定的だという決定。裏返せば、情報を出した報道機関の責任を問うものではないか」とみる。

 報道機関が法的な責任は負わないまでも、ネット転載の被害を意識して倫理的責任を考えなければならないと指摘した。その上で「変化に対応せず、報道の在り方が従来のままであれば、報道機関の個人情報制度に対する主張は社会に理解されない」と述べた。

 出席者からは改正法の影響を尋ねる質問が挙がった。曽我部氏は「報道機関は適用除外になっているものの、法改正は個人情報を慎重に取り扱うよう求めている。法改正がもたらす社会通念の変化によって、取材・報道への支障が出ることはありうる」と指摘した。

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