1. 日本新聞協会トップページ
  2. すべてのヘッドライン
  3. [マス倫全国大会]読者の期待と信頼に応える 

[マス倫全国大会]読者の期待と信頼に応える 

保阪正康氏 善悪二元論排し精査を

 マスコミ倫理懇談会全国協議会の第61回全国大会が「いま、メディアの信頼と役割は」をメーンテーマに9月28、29の両日、長野市のホテル国際21で開かれた。初日は基調講演に続き、七つの分科会で討議した。2日目の全体会議で「倫理水準のさらなる向上に努め、読者・視聴者の期待と信頼に応える」とする申し合わせを採択。新聞、通信、放送、出版、広告、インターネットなど100社・団体から308人が参加した。

 信濃毎日の小坂壮太郎代表取締役社長は「メディアの生命線である信頼性の担保と、継承は普遍のテーマだ」とあいさつ。「ポスト真実」という言葉が流布する時代に「倫理観や使命感を持って報道に取り組んでいるかが問われている」と述べた。

 ノンフィクション作家の保阪正康氏は「『知る権利』とは何か、誰のものか」をテーマに講演。「知る権利は市民が生まれた段階で得る固有の権利。一人一人がメディアに委託している」とし、メディアや記者がその社会的責任を自覚する必要があると指摘した。

 また、戦争に突き進んだ昭和10年代の日本を例に「良いか悪いかの二元論に陥ることなく、何が悪かったのか、なぜ道を誤ったか精査するのがメディアの役割だ」と述べた。「知る権利の代行者」の役割を果たすには、記者が歴史への理解を深め、問題の本質に迫ることが重要だと語った。

 議長は信濃毎日の井口弥寿彦編集局長、信越放送の長岡克彦取締役情報センター長が務めた。分科会は「実名報道の意義」「報道と地方自治」「国益とメディア」など7テーマで討議した。

 「ネット時代に世論はどのように作られるのか」と題した分科会では、SNSなどに批判が殺到する「炎上」の問題からネット言論の特徴とメディアの役割を議論した。

 立命館大の開沼博准教授は、ネット上では個々人が地縁、職場、労働組合といった共同体の利害や歴史を考慮せずに意見表明するため、議論が短絡的になりやすいと指摘。また膨大な情報が行き交う中で、物事を合理性ではなく、信じられるか否かで判断する「宗教の時代」に戻りつつあると述べた。情報を過度にステレオタイプ化して分かりやすく伝える「『悪しき教祖』が現れかねない」と危惧した。

 メディアもこうした変化に対応し、記者個々人の存在を前面に出すことが必要だと提起した。「この記者が書いた記事は信じる」という信頼感が、メディアの信頼の基盤になると語った。

 IT分野を専門とする朝日の平和博記者は、メディアが重視すべき役割にファクトチェックや調査報道を挙げた。米国でトランプ大統領らの発言を徹底的に検証した新聞社が購読者数を急激に増やした例を示した。速報性よりも、掘り下げた分析に基づく「スローニュース」も重みを増すだろうとも述べた。

ページの先頭へ