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ネット時代の被害者報道 実名の意義 再構築必要 長期的な視点で取材を マスコミ学会研究会

 マスコミ学会は1月30日、インターネット時代の被害者報道の在り方を議論する研究会を新聞協会会議室で開いた。実名報道に対する批判が強まる背景には、SNSの普及や被害者支援意識の高まりがあるとして、実名を報じる意義を再構築する必要があるとの意見が出された。初報段階では匿名でも、被害者や家族の理解を得た上で事後に実名を報じる長期的な視点を持つべきだとの指摘があった。

 日弁連は昨年12月、神奈川県座間市のアパートで男女9人の遺体が見つかった事件の報道に関し、被害者や遺族のプライバシーへの配慮を求める談話を出した。神奈川県弁護士会も11月に同様の談話を出している。

 こうした批判の高まりについて、朝日の河原理子社会部記者は「2000年前後に沸き起こった『報道被害』という問題提起が解消されないまま残っている。その影響が被害者支援の進展やSNSの発達といった変化と共に立ち表れている」との見方を示した。事件・事故の被害者支援の動きが弁護士らを中心に進んでからも、メディア側は変化に対する認識が不十分だったとし「被害者に接する職業であるにかかわらず、結果的に取り残された」と語った。

 実名入りの記事が一度ネット上に出れば、発信元が削除しても拡散は止められない。当事者や家族がいわれのない中傷にさらされる恐れもある。そういった状況では「初報は実名、以降は匿名」といった対応も意味をなさなくなったと指摘した。「実名原則を唱えるだけでは事態は変わらない。実名の必要性に関する考え方を再構築し、繰り返し説明しなければならない」と述べた。

 TBSの神田和則前編集主幹(現コンプライアンス室長)は、被害者や遺族と地道に信頼関係を築くことが必要だと話した。「最初は実名を出すことに理解が得られなくても、時間の経過と共に心情が変わることもある。初報に注目が集まるが、時間を置いてでも伝え続けていくことが重要だ」

 実名報道や被害者取材への批判が強まる中、個々の記者が必要性や理由を考えなければならないと河原記者は指摘する。被害者側から「記者が被害者に話を聞くことに後ろめたさを持っていれば、よい取材をしようという気持ちになれず悪循環に陥るのではないか」と指摘を受けたこともあるという。遺族を講師に迎えた研修などを通じ、被害者報道の質を高めていくことが重要だと語った。

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