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少数者の側から問い掛けを 原寿雄さん追悼シンポ

 昨年11月に亡くなったジャーナリスト・原寿雄さんの追悼シンポジウムが3月10日、プレスセンターホールで開かれた。原さんの「少数者の側に立つ」とのジャーナリズム論を巡り、記者が持つべき問題意識や姿勢について討議した。情報へのアクセスについて「既得権」を持っていることを自覚し、市民の視点で問いを発することが必要だとの意見が出た。外交取材では、国の政策方針に沿った見方に陥らないよう留意すべきだとの指摘もあった。

 東大院の林香里教授は「社会がマスメディアに関心を失いつつある」と指摘した。あるべきメディア像を学生に聞いても反応がないという。「学生がメディアの問題を『わがこと』と捉えていない」と話した。

 共同の記者からフリーランスに転じた青木理氏は「マスメディアは既得権に無自覚だ」と問題提起した。取材で裁判記録を調べようとしても、記者クラブに入っていないと判決文が手に入りにくいことを例に「マスメディアが声を上げるべき情報公開の問題ではないか。そうした動きがないのは残念だ」と述べた。

 原氏は常々「ジャーナリストは少数者の側に立つべき」と訴えていたとし、記者の間でこうした意識が希薄になっているのではないかと指摘した。批判を恐れずに報じる姿勢を持ってほしいとも述べた。

 共同の杉田弘毅論説委員長は「ジャーナリストは国家意識を乗り越えるべきだ」と語った。トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の会談合意をマスメディアが予測できなかったのは、記者の思考が日本の外交政策の枠組みに捉われていたからだと説いた。「平和を守る」という意識がなければ「国の描いた筋立てに乗せられかねない」と指摘した。

 若手の教育に関しては「記者が世間知らずのエリートになっており、社会の変化に追いついていない」と課題を挙げた。青木氏は、新人に地方支局で警察取材をさせる育成方式が時代に合っていないとの見方を示した。「川に落として使える人材を引き上げる方法より、体系的に育てる視点が必要だ」と述べた。林氏は男性中心の組織から脱却し「少数者の声を拾うためにも、多様性確保に努めるべき」と訴えた。

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