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海賊版サイト対策問題 マス倫研究会 法的根拠なき遮断に警鐘 削除要請や広告停止が先決 東大院・宍戸教授

 マスコミ倫理懇談会全国協議会の「メディアと法」研究会が6月4日、新聞協会会議室で開かれた。漫画や雑誌を無断掲載する「海賊版サイト」の接続遮断問題について、東大院の宍戸常寿教授が講演した。接続遮断は通信事業者が利用者の全ての通信内容を把握する必要があり「通信の秘密の侵害を避けられない」と指摘。接続遮断に踏み込む前に、違法サイト運営者への削除要請や広告出稿の停止など有効な対策があると述べた。サイトを見るだけでは著作権侵害の度合いが分かりにくいことから、刑法上の「緊急避難」を根拠とするのは難しいとの見方を示した。

 政府は4月、著作権保護のためインターネット接続事業者に悪質な3サイトへの接続遮断を促す緊急対策を決めた。宍戸氏は「接続遮断は利用者の全ての通信内容を把握しなければできない仕組みになっている」とし、通信の秘密の制限には本来、利用者の同意が必要だと述べた。

 政府は通信の秘密を侵すことを認めつつ、刑法上の「緊急避難」に当たる場合は問題ないとの見解を示している。宍戸氏はこの対応に懐疑的な立場を取る。

 やむを得ない場合の手段である緊急避難を適用する前に、運営者への削除要請や国民への啓発活動、違法サイトのリスト化など「別の対策が考えられる」と述べた。中でも違法サイトへの広告出稿を止めることが最も有効だと話した。

 緊急避難の先例としては、児童ポルノへの接続遮断がある。宍戸氏によると、これは「一見して重大な人格権侵害と分かる極めてまれな例」。対象となるサイトも民間団体が基準に沿って慎重に判断していると指摘した。

 一方、著作権侵害はサイトを見るだけでは被害の範囲や程度が分からないため、必ずしも通信の秘密を制限すべきか判断できないとした。これらの点から宍戸氏は「海賊版サイトへの接続遮断には法整備が欠かせない」と指摘した。また、政府が法的根拠なく遮断の対象とするサイトを決めたことについては「検閲の恐れがある」とも述べた。

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