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2003年10月
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新聞協会賞を3件に

* 共同がバグダッド支局を正式開設
――他社は交代で記者常駐も
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新聞記事を携帯電話に音声で配信

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-- 阪神タイガース優勝で活気 在阪スポーツ紙
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今月の話題>>>
マスコミ倫理懇談会全国協議会の全国大会開かれる
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新聞協会賞を3件に

新聞協会は9月3日、2003年度新聞協会賞の授賞作として編集部門3件を決定した。授賞式は、10月15日に熊本市で開催する第56回新聞大会式典で行う。大治朋子(おおじ・ともこ)・毎日新聞東京本社編集局社会部記者は、昨年の「防衛庁による情報公開請求者リスト作成に関するスクープ」に続き、「ニュース」での2年連続受賞となった。

新聞協会賞は、新聞界(通信・放送を含む)全体の権威と信用を高める諸活動を促進する目的で1957年に創設された。編集、経営・業務、技術の各部門で顕著な功績のあった新聞協会加盟会員社所属の新聞人に対して贈られる。

〔受賞作と授賞理由〕

自衛官募集のための住民基本台帳 情報収集に関するスクープ
毎日新聞東京本社
(代表)編集局社会部 大治 朋子

授賞理由

 毎日新聞東京本社は、防衛庁が自衛官募集のために、満18歳を迎える適齢者の情報を住民基本台帳から抽出して提供するよう全国の自治体に37年間にわたって要請し、多数の自治体が法的根拠のない情報収集に応じていた事実を、平成15年4月22日付朝刊一面トップで報じた。
 粘り強い取材により防衛庁と500を超える自治体が、安易に個人情報を取り扱っていた事実を国民に明らかにしたこのスクープは、行政機関の個人情報収集における暴走の危険性と、行政機関個人情報保護法案の問題点を具体的に指摘した。その結果、同法の付帯決議に適正収集に関する規定が盛り込まれるなど、社会的に影響を与えた報道として高く評価され、新聞協会賞に値する。



「生保予定利率下げ問題」の一連の報道
日本経済新聞社
中国総局(前編集局経済部) 吉田 忠則
編集局経済部 藤井 一明

授賞理由

 日本経済新聞社は、平成14年7月25日付で、金融庁長官が生保予定利率下げを今後検討していく意向を表明したこと、同年11月25日付で、金融庁が予定利率の引き下げを認める方針を決め、次期通常国会に保険業法の改正案を提出すること、平成15年1月19日付で金融庁が引き下げ後の利率に3%程度の下限を設定するなど同法の改正原案をまとめたことを、いずれも朝刊一面でいち早く特報した。
 金融庁の動きを粘り強く丹念に追い、金融行政の大きな方針転換を節目節目で先行して報道し続けた一連の特報は、国民の将来の生活設計に多大な影響を及ぼすものとして大きな関心を呼び起こした。先見性ある報道として高く評価され、新聞協会賞に値する。


検証・ハンセン病史
熊本日日新聞社
(代表)「検証・ハンセン病史」取材班 編集局報道部次長兼論説委員 丸野 真司

授賞理由

 熊本日日新聞社は、平成13年5月のハンセン病国家賠償請求訴訟で、熊本地裁が国の隔離政策を違憲とする歴史的判決を下したことをきっかけに、ハンセン病をめぐる歴史的経緯や隔離政策により人権侵害が繰り返されていた事実を、元患者や関係者からの証言に基づいて、同年12月24日から15年6月29日まで長期にわたり連載した。
 ハンセン病に関する報道が不足していたという自戒も込め、資料に基づく事実と元患者や関係者の証言を率直に伝え、隔離の歴史が残したハンセン病問題を今後の教訓にしようとする報道姿勢は、差別解消に寄与するなど大きな反響を巻き起こした。優れた長期連載として高く評価され、新聞協会賞に値する。

 オリンパスからの提案で、新聞3社と共同での実証実験が実現した。9月16日から読売が一般向けにニュース、スポーツ記事を、9月20日から毎日が視覚障害者、高齢者向けの記事を、9月22日から朝日が英語学習者向けに英字紙「ASAHI Weekly」の記事を配信している。


共同がバグダッド支局を正式開設
――他社は交代で記者常駐も


共同通信社は8月16日、4月に開設した臨時バグダッド支局の体制を整え、正式にバグダッド支局とした。バグダッドではイラク戦争後も依然として米兵らへの攻撃が続くなか、共同以外の日本の報道各社も、現地に事務所を開設、あるいはホテルに交代で記者を常時配するなどして取材を続けている。

共同の支局開設は、自衛隊の派遣が予想されることなどイラク情勢は、今後も国際報道の柱になるとの判断。41番目の海外総支局となる。現在は支局長を含め3人の体制。

正式な支局ではないが、中日新聞東京本社は7月1日付でオフィスを開設。現地通信員1人が取材に当たっている。随時、エジプトのカイロ支局の記者2人が交代で現地入りするほか、今後の情勢次第でヨーロッパの支局や日本から記者を派遣することも検討中。 NHKはホテル内に駐在事務所を設け、常時3人以上の記者を配している。 朝日、毎日、読売の三社は、他の海外支局から記者を交代で派遣する形で常時取材体制を確保している。

日経、産経、時事は記者を置かず、カイロやバーレーンから適宜、派遣している。3社とも、今後の情勢次第で記者の常駐や長期派遣をする予定だが、支局開設は考えていない。

民放各社も、治安状況や自衛隊派遣の延期などから、現在は記者を置いていない。


新聞記事を携帯電話に音声で配信

朝日、毎日、読売の3新聞社はこのほど、オリンパス光学工業(本社・東京都新宿区)と共同で、携帯電話を使った新聞記事の音声配信サービス「M-Studio」の実証実験を開始した。新聞記事の音声配信は、携帯電話サービスとしては初の試み。来春の実用化を目指す。

「M-Studio」はオリンパスの音声合成システムを活用したシステムで、携帯電話利用者に音声とテキストデータで記事を配信する。実証実験では、音声変換のアプリケーションを搭載した携帯電話をモニターに貸与し、2か月間実際にサービスを利用してもらう。

オリンパスからの提案で、新聞3社と共同での実証実験が実現した。9月16日から読売が一般向けにニュース、スポーツ記事を、9月20日から毎日が視覚障害者、高齢者向けの記事を、9月22日から朝日が英語学習者向けに英字紙「ASAHI Weekly」の記事を配信している。


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阪神タイガース優勝で活気 在阪スポーツ紙

関西に本拠に置くプロ野球・阪神タイガースが15日、18年ぶり4回目のセントラル・リーグ優勝を決めた。在阪スポーツ5紙は優勝決定直後に号外を発行したほか、16日付即売朝刊を大幅に増刷、事前に準備を進めていた5紙を袋詰めした「5紙セット」を販売したほか、記念号や写真グラフも発行した。

号外配布では各社とも、人々が殺到して危険が生じる恐れのある地域での配布を避けたことから、事故などの大きな問題は起きなかった。

スポーツニッポン新聞は2版の号外を発行。まず阪神が広島東洋カープに勝った午後5時30分の時点で「1版」1万1000部を製作、号外を持った社員が大阪駅前などの繁華街に待機し、7時半にヤクルトスワローズが破れて阪神タイガースの優勝が決まった瞬間から配布した。その後、星野仙一監督の胴上げ写真を掲載した「2版」を8000部配布した。

このほか、日刊スポーツが3万部、報知が2万5000部、デイリースポーツが2万部の号外を配布した。サンケイスポーツは号外を出さなかった。報知とデイリーは大阪本社だけでなく東京本社でもそれぞれ3万部、1万2000部の号外を発行した。

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マスコミ倫理懇談会全国協議会の全国大会開かれる

全国の新聞、放送、出版、広告などの企業・団体を会員とするマスコミ倫理懇談会全国協議会は9月25、26の両日、青森市で「第47回全国大会」を開催した。同協議会は「マスコミ倫理の向上と言論・表現の自由」を目的として1958年、日本新聞協会や日本民間放送連盟のほか出版、映画、広告などのマスコミ関係10団体と全国10地区のマスコミ倫理懇談会を構成メンバーに結成された。マスコミ各界をつなぐ唯一の組織となっている。

各地区ごとに月例会や臨時総会を開催し、メディア規制の動向やマスコミ倫理の向上について意見交換している。全国大会はこれらの成果を集約し、メディアの枠を超えて表現の自由の重要性をアピールするために毎年開催している。

日本のマスコミ(メディア)を取り巻く状況は、年々厳しくなっている。人権やプライバシー保護、青少年保護を名目にメディアを規制する法律や条例が相次いで成立する一方、メディアの行き過ぎた取材・報道によって読者・視聴者の不信が広がっている。こうした状況を反映して、「国家、市民、メディア」をテーマに開かれた今大会は、117社から過去最高の307人が参加した。

大会は初日の全体会議に続き、午後から6つの分科会に分かれて、活発な討議が交わされた。このうち、4つの分科会では「報道上の諸問題」を取り上げ、残り2つの分科会では「広告の事例研究」を行った。

「メディア規制とマスコミ倫理」をテーマにした分科会では、5月に成立した個人情報保護法や導入の準備が進む「裁判員制度」などに共通するメディア規制の動きについて情報・意見交換。参加者からは報道の自由侵害への危機感を訴える発言が相次いだ。

「事件・事故報道とマスコミの役割」をテーマにした分科会では、最近問題となっている集団的過熱取材(メディア・スクラム)について、長崎市での幼児誘拐殺人事件などの少年犯罪報道や北朝鮮拉致被害者報道を中心に各メディアの取り組みを検証しながら意見交換を行った。

「戦争報道とメディアの責任」をテーマにした分科会では、世界中のメディアが報道合戦を繰り広げたイラク戦争を題材に、「戦争」という極限状況の中での客観報道の在り方や報道の自主性について意見交換。戦争当事国のプロパガンダ(宣伝)と情報洪水の中で、改めて客観報道の難しさを指摘する声が出された。最もホットな北朝鮮報道では、国民感情との距離の取り方の困難さが指摘された。

「社会変化とメディアの使命」をテーマにした分科会では、初めてメディアとジェンダーの問題が取り上げられた。紙面の用語、表現で性差別と受け取られないようにガイドラインを設けた全国紙からの報告をもとに議論した。参加者からは「レトルト食品が売れているのは、働く女性が増えているからという記事があった。実際にはお年寄りや主婦も買っている。物の見方が浅くならないよう気をつけたい」「男性の育児休暇が異端と受け取られかねない新聞社の現状を変えるため、子育て労使研究会を作った」などの報告があった。

これらの分科会討議を受けて、最終日に「大会申し合わせ」を採択して閉幕した。申し合わせでは「メディアの役割を軽視し、規制を強化する動きには、引き続き反対する」と表明したうえで、「あらゆる権力から独立したメディアの存在と、取材・報道の自由が民主主義社会の基盤であることを、改めて市民に広く訴えることが緊急の課題であることを確認する」とした。

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