全国の新聞、放送、出版、広告などの企業・団体を会員とするマスコミ倫理懇談会全国協議会は9月25、26の両日、青森市で「第47回全国大会」を開催した。同協議会は「マスコミ倫理の向上と言論・表現の自由」を目的として1958年、日本新聞協会や日本民間放送連盟のほか出版、映画、広告などのマスコミ関係10団体と全国10地区のマスコミ倫理懇談会を構成メンバーに結成された。マスコミ各界をつなぐ唯一の組織となっている。
各地区ごとに月例会や臨時総会を開催し、メディア規制の動向やマスコミ倫理の向上について意見交換している。全国大会はこれらの成果を集約し、メディアの枠を超えて表現の自由の重要性をアピールするために毎年開催している。
日本のマスコミ(メディア)を取り巻く状況は、年々厳しくなっている。人権やプライバシー保護、青少年保護を名目にメディアを規制する法律や条例が相次いで成立する一方、メディアの行き過ぎた取材・報道によって読者・視聴者の不信が広がっている。こうした状況を反映して、「国家、市民、メディア」をテーマに開かれた今大会は、117社から過去最高の307人が参加した。
大会は初日の全体会議に続き、午後から6つの分科会に分かれて、活発な討議が交わされた。このうち、4つの分科会では「報道上の諸問題」を取り上げ、残り2つの分科会では「広告の事例研究」を行った。
「メディア規制とマスコミ倫理」をテーマにした分科会では、5月に成立した個人情報保護法や導入の準備が進む「裁判員制度」などに共通するメディア規制の動きについて情報・意見交換。参加者からは報道の自由侵害への危機感を訴える発言が相次いだ。
「事件・事故報道とマスコミの役割」をテーマにした分科会では、最近問題となっている集団的過熱取材(メディア・スクラム)について、長崎市での幼児誘拐殺人事件などの少年犯罪報道や北朝鮮拉致被害者報道を中心に各メディアの取り組みを検証しながら意見交換を行った。
「戦争報道とメディアの責任」をテーマにした分科会では、世界中のメディアが報道合戦を繰り広げたイラク戦争を題材に、「戦争」という極限状況の中での客観報道の在り方や報道の自主性について意見交換。戦争当事国のプロパガンダ(宣伝)と情報洪水の中で、改めて客観報道の難しさを指摘する声が出された。最もホットな北朝鮮報道では、国民感情との距離の取り方の困難さが指摘された。
「社会変化とメディアの使命」をテーマにした分科会では、初めてメディアとジェンダーの問題が取り上げられた。紙面の用語、表現で性差別と受け取られないようにガイドラインを設けた全国紙からの報告をもとに議論した。参加者からは「レトルト食品が売れているのは、働く女性が増えているからという記事があった。実際にはお年寄りや主婦も買っている。物の見方が浅くならないよう気をつけたい」「男性の育児休暇が異端と受け取られかねない新聞社の現状を変えるため、子育て労使研究会を作った」などの報告があった。
これらの分科会討議を受けて、最終日に「大会申し合わせ」を採択して閉幕した。申し合わせでは「メディアの役割を軽視し、規制を強化する動きには、引き続き反対する」と表明したうえで、「あらゆる権力から独立したメディアの存在と、取材・報道の自由が民主主義社会の基盤であることを、改めて市民に広く訴えることが緊急の課題であることを確認する」とした。