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2008年9月
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* 秋田魁が夕刊廃止
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北京オリンピック報道をふり返る
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秋田魁が夕刊廃止


 秋田県を発行エリアとする地方紙・秋田魁新報社は、9月末で夕刊を廃止し、10月1日から朝刊に統合した「新朝刊」を発行すると発表した。新朝刊は従来の朝刊よりもページ数を増やす。月決め購読料は現行の3,007円から2,950円に57円値下げする。

 新朝刊の建てページは、従来の朝刊の24ページから4ページ増やし、28ページとする。新紙面には、夕刊掲載の文化面や投稿欄などを盛り込む。夕刊のなかった土曜と日曜も増ページする方向で検討中。情報量の減少に対しては、紙面の充実に努めるほか、大幅な紙面刷新も検討する。ニュースサイトも活用するという。

 秋田魁は、いまではめずらしくなった朝刊部数と夕刊部数が全く同じ朝夕刊完全セット。新聞用紙代の値上げといった制作費の増加などを受け、購読料の値上げを含め対応策を検討してきた。その結果、夕刊を朝刊に統合した新朝刊の発行を決めた。2,950円への値下げは、夕刊廃止に伴う費用の削減額を計算の上、限度額を算出した。

 沓沢伸義常務取締役労務・営業担当総務局長は「値上げするよりも、夕刊を朝刊に統合して値下げする方が将来的に打つ手が広く持てる。セットで夕刊を持っていた点を生かした。値下げは他紙との競争上も強みになる」と説明する。

 日本ABC協会の調査によると、秋田魁の2008年6月の発行部数は、朝夕刊ともに25万9,145部。朝夕刊セット紙が完全に朝刊単独紙へ移行するのは、2004年4月に福島県を発行エリアとする福島民報、福島民友の両社が夕刊を休刊して以来となる。

 日本の新聞には、朝刊単独紙、夕刊紙、朝・夕刊セット紙といった発行形態がある。朝・夕刊セット紙の場合、秋田魁のように、朝刊を購読するすべての読者に夕刊も購読してもらう完全セットが理想だが、現実には夕刊は購読しない「セット割れ」と呼ばれる現象が進行している。夕刊部数が減少を続け夕刊を廃止するケースはあるが、完全セット紙が夕刊を廃止するのは極めて珍しい。

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毎日新聞英文サイト問題

 毎日新聞社が運営する英文のニュースサイト「The Mainichi Daily News」の掲載記事をめぐって、サイトの閉鎖に至る深刻な事態が発生した。同社は調査結果を毎日新聞本紙と同社サイトで公表、関係者を処分した上で、9月1日からリニューアルオープンした。

 毎日新聞社は6月25日付朝刊で、英文サイト「The Mainichi Daily News」上のコラム「WaiWai」閉鎖に関する経過説明とおわびを掲載した。

 同コラムは、数年前から、国内の週刊誌報道を引用し、日本の社会や風俗の一端を紹介してきた。これらの記事に対し「低俗すぎる」などの批判や抗議が寄せられ、編集部では記事の一部に不適切な内容があったとして削除、過去記事へもアクセスできないようにしていた。6月21日には、同コラムを根本的に見直すとして閉鎖。23日には同社ウェブサイト「毎日jp」に閉鎖の経過説明とおわびを掲載した。そしてコラム担当の英文毎日編集部記者を懲戒休職三か月としたほか、監督責任を問い英文毎日編集部長を役職停止とするなど、関係者を処分した。

 毎日新聞社は9月1日、英文サイト「毎日デイリーニューズ」を全面的に刷新した。新サイトは、エンターテイメント系ニュースの割合を減らし、政治・経済、事件・事故を中心に伝える。日曜連載の「時代の風」や「記者の目」なども掲載する。

 編集長のほか、副編集長を置くなど編集体制も一新した。社外の識者による「アドバイザリーグループ」も発足させた。日本外国特派員協会(FCCJ)会長なども務めたアンドリュー・ホルバート氏や元駐カナダ大使らが、定期的に記事や企画の選択などをチェックし、意見をサイトで紹介する。

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北京オリンピック報道をふり返る

 過去最多となる204の国と地域が参加し、28競技302種目が競われた北京五輪が8月24日、閉幕した。

心配されたテロや、運営上の大きな問題もなく終了した「史上最大級の五輪」を、新聞・通信各社は連日、一面トップで大々的に報じた。新疆ウイグル自治区での記者暴行などを除けば、取材、新聞制作上の大きなトラブルもなかった。

 テロ、大気汚染、食の安全など五輪開会前から不安材料が多かった今大会。終わってみれば大きな問題はなく、報道の自由や人権問題の改善などに注文は付けられたものの、「概ね成功した大会」と報道各社は見ている。

 各社はこれまで以上に今大会を大々的に報じた。朝日・毎日・読売三紙がそれぞれ、期間中に発行した計30回の朝・夕刊のうち、五輪関連以外の記事が一面トップとなったのは5〜8回(東京本社管内最終版)のみ。読売東京の寺田正臣編集局次長は「国内外に大きな事件・事故がなくイベントに集中できたことも大きい」と指摘する。読売は期間中、号外を9回発行した。

 共同の出稿記事本数もアテネ大会に比べおよそ倍になった。チベット問題やメディア規制、五輪外交に関する記事など競技場外の出稿が多かったほか、時差がほとんどなく記事の差し替え、更新が増えたことも増加の要因という。写真もほぼ倍となる1日当たりおよそ300枚を配信した。

 毎日と共同はニコンと協力し、カメラに装着した無線LANで、撮影と同時に写真が自動的にメーンプレスセンターに送られるシステムを競泳会場に構築、速報に役立てた。共同は、競泳の北島康介選手が100メートルで優勝した写真を、レース終了後6分で加盟社に配信。荻田則夫編集局次長は「従来はどう頑張っても15分から20分が常識だった。間違いなく“共同新記録”」と胸を張る。

 今大会で日本が獲得した9つの金メダルのうち7つが連覇だった。一方、フェンシング、ケイリンで初めてメダルを獲得、カヌー、トライアスロンなどで入賞者が出るなどマイナー競技での活躍も目立ったが、各社とも事前を含め取材は順調だったようだ。

 毎日も事前企画で取り上げた選手が活躍したと振り返る。熊田明裕運動部副部長は「フェンシングの太田選手などはテレビなどへの露出も少なく、事前取材しやすい対象だった」と指摘する。一方、有名選手ほど個人的なエージェントが仲介に入り、取材が難しくなる傾向がアテネ前後から強まっているという。「テレビカメラがないところで本音を聞く機会が減った。ギャラを要求されたり、スポンサーの広告掲載を求められるケースも出てきた」とし、今後の取材への影響を危惧した。

 朝日新聞東京本社の佐藤吉雄編集局長補佐は「スポーツ報道のバリエーションを豊かにしなければいけない」と指摘する。「人間ドラマは似た話になりがちだ。読者の目も肥えている。原点に返ってスポーツ自体を描くなど、今後のスポーツ報道の在り方を考える必要がある」

 大会としては大いに盛り上がった北京五輪。しかし、各社とも「違和感は残る」と振り返る。

 露骨な国威発揚、開会式でのコンピューターグラフィックスによる合成映像や口パクといった“演出”などだ。その一方で、中国が国家の威信をかけて準備してきた大会だっただけに、大会運営面、特にハード面の評価は総じて高い。

 懸念されていた通信面も順調だった。約9万人収容の主会場からも携帯電話が使用でき、メーンプレスセンター(MPC)のLAN等も無事に稼働し、送稿面に支障はなかった。一方で、MPC内でのウェブサイト閲覧が一部規制されるなど、情報を統制しようとする姿勢も見られた。

 取材対応の問題点を指摘する声も多い。会見ではメディアからの質問に、組織委員会が紋切り型の回答に終始する場面が多かったほか、政治的な質問をさえぎる場面もあった。共同の荻田則夫編集局次長は「西側ではあり得ない。中国の、メディアに対する認識を表している」と指摘する。

 競技場外の取材でも、公安警察と見られる私服姿の人間が多数おり、市民に質問しても生の声が返ってこなかったとの声も聞かれた。五輪期間直前からは、新疆ウイグル自治区で記者への暴行、拘束もあった。産経の鳥海美朗北京五輪室長は「五輪を通じ、中国の報道の自由や人権問題が改善されると世界は期待していたが、その点ではゼロ回答だった」と厳しい。

 ただし、以前に比べれば「取材の自由は格段に進歩している」との声も多く聞かれた。1990年の北京アジア大会を取材したスポニチの藤山健二スポーツ担当部長は「当時、街の取材は書類がなければ何もできなかった。今回は取材中に警官がやってくることもなかったと聞く」と一定の評価を示した。

 今回の北京五輪では世界の多数のメディアが中国で取材活動を行った。これが今後の中国にどのような影響を与えるか。毎日新聞東京本社の藤田健史運動部長は「中国の国民が、メディアの取材活動の国際標準を知ることができたのではないか。報道の自由が前進するきっかけになれば良い」と期待を込めた。


日本人選手のメダル獲得を報じた号外を受け取る人々(東京・銀座)

 

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