2月26日付 地域の核「酒蔵」を応援

西日本「初しぼり 筑後の酒」

 日本酒造りには複雑な醸造工程と精緻な温度管理が求められ、作り手の技術とプライドが注がれている。連載は酒の仕込みが最盛期を迎えた1月後半から16回、朝刊に掲載。酒蔵が建ち並び有数の酒所である福岡県・筑後地方で酒造りに懸ける蔵人たちのひたむきな姿をつづった。

 三井の寿醸造元(大刀洗町)の「命の源」は創業以来90年間そのままの酒蔵の土壁だ。壁は蔵に住み着く「蔵付き酵母」を宿す。こうじの自動製造機を排し、酒蔵に住み着いた天然酵母だけを用いた伝統的酒造りの復興を狙う。

 筑後で特に酒造が盛んな久留米市城島町。しかし、使われる米は長らく町外から仕入れていた。昨年、「地元の土、水、太陽、空気だけでできた酒」を目指し、地元農家が酒米作りを始めた。選んだ山田錦は病気に弱く、風に倒れやすいため栽培が難しい品種だ。九州北部豪雨に見舞われながらも収穫に結び付けた。

 山口酒造場(久留米市北野町)の11代蔵元は年に30日程度、海外で筑後の酒を売り回る。背景には疲弊する地元を救いたいとの思いがある。「コメを一番高く売る方法は日本酒に加工して輸出すること」で、外貨を獲得して地元農業に還元したい。そのために「農業と酒蔵が一体になった地域づくりをやらないと意味がない」。

 杜(もり)の蔵(同三潴町)5代蔵元は、アルコール添加の本醸造酒など生産量の3割を見限り、全量を純米酒に切り換えた。「"うまい"の先にある"幸せ"を届けたい」と意気込む。

 久留米総局の阪口由美記者を中心に、同局の畑山晋作記者と糸山信八女支局長、安達清志浮羽支局長が担当。根底にあったのは、地域の核となる酒蔵を応援したい思いだ。阪口記者は「あらためて取材を進めると、蔵ごとの違いが鮮明になった」と話している。(夏)

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