3月12日付 街づくりに誇りを

上毛「ひと紡ぎ まち紡ぎ―絹遺産と歩む」 

 かつて日本の「富国強兵」政策を支え、近代化の基礎を築いた製糸業。その先頭に立った富岡製糸場(群馬県富岡市)と周辺の絹産業遺産群を政府は今年1月、世界文化遺産候補として国連教育科学文化機関(ユネスコ)に推薦した。「あらためて県民に地域の歴史、文化への認識を深めてもらいたい」(久保田健文化生活部長)との思いから、連載は始まった。

 1872(明治5)年から1987(昭和62)年まで操業した富岡製糸場。長年の世界遺産登録運動で、その意義は県民に深く浸透している。しかし、養蚕技術を全国に広めた高山社跡をはじめとする絹産業遺産群への認知は低い。担当した文化生活部の紋谷貴史記者は「桑畑、養蚕があっての製糸業で、織物業までつながる。その意義と広がりを伝えたかった」と話す。

 全国有数の養蚕県である群馬だが、養蚕農家は1958年の8万4470戸をピークに減少し、2012年は217戸。蚕を見たことすらない子供も増えた。1月24日から始まった第1部は「文化の継承」をテーマに、養蚕、製糸を身近にする取り組みを紹介した。

 目立つのは行政の意識の低さだ。ある自治体の教育委員会は次世代への教育について、「来年夏、世界遺産に登録されたら考える」と答えた。教員の養蚕への理解も足りない。こうした課題をいかに浮き彫りにするか腐心した。

 民間の調査で、全47都道府県中ブランド力が最低だったこともある群馬。紋谷記者は「世界遺産に値する施設があり、製糸、養蚕技術を世界に広めた歴史がある。世界遺産を目指すだけでなく、誇りをもった街づくりにつながれば」と語る。

 第2部は施設の保存と活用、第3部は観光などを軸とした地域振興がテーマだ。久保田部長はじめ、文化生活部と各支局の記者が担当する。(三)

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