6月18日付 厳しい現実、里山も都市部も

熊本日日「くまもとの明日」

 人口減少や高齢化がもたらす影響は、熊本の里山にも都市部にも厳しい現実を突きつける。その現場に年間企画で迫る。

 第1部「山が下りる」は、鳥獣被害にさらされる阿蘇周辺の里山を描いた。高齢化と後継者不足で放棄される畑が増え、シカやイノシシが人里を餌場にのさばる。人と動物の力関係が崩れているのだ。「楽に餌を食べられて山に帰らない獣たちは、都会に出て故郷に帰ろうとしない若者と一緒だ」。ある林業者には山と人間社会が重なって見えた。

 天草市の大ノ浦地区は山の斜面に50戸が点在する農業集落だ。第2部「大ノ浦にて」は、33年前に大ノ浦で撮影されたドキュメンタリー映画「海と太陽と子供たち」と現在の姿を重ねた。映画に登場した児童16人のうち、地区に残ったのは1人だけ。残されたのは細々と農業を営む高齢者たちだった。伝統行事は途絶え、消防団の活動も成り立たなくなった。

 第3部「お悔やみの時代」は人の死に接する現場を取り上げる。人のつながりが希薄になった今、山村よりも都市部で孤立死が目立つ。検視を25年間続けてきた警察医は「せめて早く発見できるように」と願う。

 「人口増を安易に約束する政治家は多いが、長期的に取り組まなくてはいけない問題だ。報道することで有権者の投票行動や行政に反映させたい」と、連載を中心となって担当した鹿本成人上天草支局長。企画の原点は約10年前に赴任した球磨支局にある。林道には自然に飲みこまれる廃屋が目立ち「人と自然の境界線が明らかに薄まっている」と感じた。

 連載は新年号の特集記事をプロローグに始まった。第4部以降は、少子化の背景にある結婚や育児の難しさに焦点を当てる。編集委員室が担当する同名の検証記事と連動し、編集局が総力を挙げて取り組む。(夏)

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