9月24日付 人々の証言を詳細に記述

神奈川「関東大震災90年 未曾有に学ぶ」

 10万5千人余りの死者・行方不明者を出した関東大震災。それから90年が過ぎた今月1日に始まった連載は、紙面改革の一環で新設した「論説・特報」面のスタートを飾っている。

 関東大震災は東京の被害に焦点を当てがちだ。しかし、神奈川県も甚大な被害を受け、犠牲者は3万2千人を超えた。デスクを務める石橋学報道部次長兼論説委員は「県民が自分たちの震災として位置付ける機会にしたい」と語る。

 第1部は全7回で、「語り継ぐ」がテーマ。もはや当時を知る人は少ない。冒頭の2回は、震災を生き残った人々の体験談を集めた。災禍をくぐり抜けた109歳の女性のほか、被災者の遺族にも取材した。横浜で被災後に移り住んだ東北で東日本大震災に遭った女性もいた。公的な記録がその後の戦災で失われた中、証言の価値は計り知れない―震災に関する証言を集めてきた横浜開港資料館の研究員は強調する。

 悲劇の記憶を保存し続けようとする人々も追った。相模原市内のある集落で当時、土砂崩れのため16人が犠牲になった。土砂は今も小高い山として残り、そこに立つ地蔵尊と石碑が犠牲者を悼む。遺族が親子3代にわたり守っている。祖母の被災体験を聞いて育った県の地学研究者は、こうした石碑を訪ね歩き記録に残している。

 連載は論説・特報面の大半を占め、1回2千字近くになることも。「既成概念が新聞をつまらなくしていると感じていた」と石橋氏。定番の文量という制約を取り払って記者に自由に書かせたことで、詳細に記述することの大切さを再認識したという。

 今後、火災や津波、土砂災害と復興といったテーマを取り上げる。東日本大震災と同様の課題を前に、石橋氏は「足下に目を向けてこなかったと気付かされた」と話す。来年3月11日まで続ける。(三)

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