11月 5日付 危険性を正しく伝える

福島民報「ベクレルの嘆き 放射線との戦い」 

 福島第一原発事故から2年半あまり、ベクレルやシーベルトなどかつては聞き慣れなかった単位も、福島県では日常のものとなった。一方、放射線の影響をめぐっては多種多様な主張が飛び交う。今年1月からの連載について、紺野正人報道部副部長は「安心の目安は人によって異なるが、危険性を正しく伝えたかった」と語る。

 第1部「安心の尺度」は、地域住民の憂慮や葛藤を取り上げた。事故後、次男を身ごもった女性の不安と出産への決断などを記す。娘の体内から微量の放射性セシウムが検出された母親は、さまざまな主張を前に「誰を信じればいいの」と悩む。

 こうした問いに答えるべき研究者にもスポットを当てた。第2部「安全の指標」では、「年20ミリシーベルト」の避難基準はどのように決まったのか、住民はどう受け取ったのかを描いた。政府の対応が定まらず住民の不信感は増している。リスク情報を共有することの難しさを浮き彫りにした。

 県内第1次産業への被害も深刻だ。かつてない困難を前に、第3部「未知への挑戦」は稲作やシイタケ栽培などさまざまな分野での再起に向けた取り組みを紹介した。

 第4部は「岐路に立つ除染」。住宅除染が本格化するに従って、国が掲げる除染の長期目標「1ミリシーベルト以下」達成の難しさが明らかになりつつある。「故郷全てを原状回復してもらいたいが、できないこともある」。伊達市の除染担当者は苦しみながらも、住民に理解を求めた。

 現在連載中の第5部は、汚染水がテーマだ。水漏れなどのトラブルが相次ぐ中、対策の行方を追う。10月半ば、紺野副部長は取材で初めて福島第一原発に入り、現場の苦労を肌で感じた。「実態を踏まえて現実的にどう対策を取るべきか、問題提起したい」と話している。(三)

ページの先頭へ