11月19日付 文化的資源を掘り起こす

山陽「セトウチ現代建築探訪」

 とかく〝ハコモノ〝と批判されがちだが、公共建築は地域の文化的資産だ。そんな思いを出発点に、連載は昨年6月にスタートした。文化部の松島健記者が、瀬戸内地域にある戦後の現代建築全12作品を訪ね、その魅力や建築家が込めたメッセージを読み解いた。

 第2次大戦で廃墟と化した都市をどう復興するか。命題を背負った建築家は、鉄、ガラス、コンクリートなどを使った現代建築の普及に取り組んだ。初回に取り上げたのは、モダニズム建築の旗手・前川国男設計の岡山県庁舎。当時まだ見慣れなかった吹き抜けのピロティで、開放的な空間を創出した。表面に凹凸が施された鉄の化粧板、規則的に配されるガラス窓……。最先端の設計思想が詰め込まれた意欲作だった。

 香川県坂出市には、宙に浮いたコンクリートの「人工土地」が広がる。都市が住宅過密や地価高騰などの問題を抱えつつあった高度経済成長期に作られた約1ヘクタールの人工地盤は、地上約5~9メートルの高さで鉄筋コンクリートの柱群に支えられている。下部に商店街や駐車場、上部に住居棟を配した巨大複合建築だ。前川の薫陶を受けた大高正人が手掛けた。都市の矛盾を解決するため、新たに大地を生み出す壮大な挑戦だった。

 松島記者は「瀬戸内が持つ特有の風土が、建築家の挑戦心を駆り立てたのではないか」と話す。連載では、丹下健三による香川県庁舎東館、現代アートさながらの個性を放つ黒川紀章の複合施設きびプラザ(岡山県吉備中央町)なども紹介した。

 ある日、連載を生徒に配布している工業高校の教師が松島記者を訪ねてきた。多くの価値ある現代建築が身近にあることが分かり、生徒が地元を見直すようになったと感謝されたという。「今後も地域に埋もれた文化的資源を掘り起こす取材を続けたい」と松島記者は話している。(福)

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