12月 3日付 どう報じるか、自問自答

福井「原発の行方」

 東日本大震災後、2011年10月から続く長期連載だ。福井県内の原発の歴史やストレステスト、核のゴミ問題、「脱原発」した場合の電力確保、再生可能エネルギーの可能性など、さまざまな課題を取り上げてきた。

 10月31日から始まった8章では、県が7月に原子力防災計画を改定したことをきっかけに、福島第一原発事故を振り返りながら住民避難の問題を検証した。福井県には14基の原発が、若狭湾沿岸に集中して立地している。重大事故が発生した場合、30キロ圏内の住民が奈良、兵庫、石川県など他県に避難することも想定される。どこの住民がどこに避難するのか、避難経路は、スクリーニングはどこでするのか―課題は山積みだ。行政担当者や住民の声を丁寧に拾い、実態をありのまま伝え、読者に考えるきっかけを提供する。

 主に政治部で構成する原発取材班が取材を担当している。1章から取材班の中心となっている政治部の伊豆倉知記者は、「既に決まっていることを書くのは簡単だが、県の計画は細部が何も決まっていない。実態がないことをどう書けばリアルになるのか悩んだ」と話す。

 福島原発事故以前から、原発は福井の最も大きいテーマの一つだったが、事故を経て報道量は桁違いに増えた。県民の問題意識もどんどん高くなっている。原発やその周辺で働く人が大勢いる中で、地域経済の問題を含め、エネルギー政策についてよく考えている人は多いという。

 脱原発といっても、目の前にある原発が消えてなくなるわけではない。即ゼロを主張する声は県内ではあまり聞こえてこない。伊豆倉氏は「福島県の状況を見ながら原発を推進しようとは言えず、脱原発といっても簡単にはできない。どう報道すればいいのか、自問自答を続けている」と話している。(さ)

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