5月20日付 新たなイメージを上書き

山梨日日「青木ケ原樹海 蒼き千年の森」 

 昨年6月に世界遺産に登録された富士山。麓に広がる青木ケ原樹海は「富士山域」として、世界遺産の構成資産となっているが、全国的に自殺の名所という負のイメージが強い。樹海の歴史を検証し、実態に迫った。

 昨年7月からの第1部「富士山の麓で」は、樹海と共に生きる人々、第2部「悠久の営み」は、樹海の成り立ちを追った。

 第3部は「『名所』のレッテル」。松本清張「波の塔」のラストシーンで、ヒロインは悲恋の末、樹海に消えていく。連載が終わった1960年以降、樹海は自殺の名所となっていき、半世紀たった今、「汚名」は世界に知られている。

 悪いイメージがこれ以上広がるのを食い止めようと、行政はさまざまな規制に乗り出す。樹海での映画・テレビの撮影を許可しなかったり、自殺者数の発表を中止したりした。4部「表現の場 規制の是非」は、規制の下で試行錯誤する表現者らの試みを取り上げた。情報の流れを遮断することが自殺者の減少につながるのか。企画報道グループの前島文彦キャップは、「読者に自分のこととして表現の自由について考えてもらう出発点になるよう心掛けた」と話す。

 5部「地下に広がる世界」は、樹海の地下に広がる洞穴が養蚕や観光において住民の暮らしを支えてきたことを紹介、6部「生き物たちのすみか」は、樹海に住む生物をはじめ豊かな自然の実情を取り上げた。今年4月に掲載した最終章「世界遺産とともに」で、樹海の遺産としての意義を検証した。

 高橋一永総合デスク部長は、「樹海のプラス面も取り上げ、新たな姿で再定義できた」と全7部43回の連載を振り返り、「ネット時代にあって、負の情報を消し去ることは難しい。だからこそ、美しくて力強い生命の森という新たな樹海のイメージを上書きしたい」と語った。(新)

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