11月10日付 自然と生きる里山の将来は

福井「帰ってきた翼 ふくい コウノトリ放鳥」

 10月3日、福井県越前市で2羽のコウノトリの放鳥が実現した。翌4日から7日まで、コウノトリが住める環境作りに取り組んできた人々の思い、自然や生き物と共に生きる将来への課題などを伝えた。

 2009年からコウノトリをシンボルに、未来に自然豊かな福井を残そうと「みらい・つなぐ・ふくい」プロジェクトに取り組んでいる。里山の古民家に「コウノトリ支局」を開設、記者が住み込んで農作業を体験・報道してきた。

 西脇和宏社会部主任は今年3月に支局の一員となり、地域住民と共に用水路の掃除や猪よけの電気柵の設置に取り組んできた。取材の過程で、「環境団体が熱心に活動する一方、参加者が少ないなどの地域課題があった。そうした悩みについて相談を受けたり、担い手の一人として話し合いに加わったりした」と振り返る。一緒に汗を流すことで率直な思いを聞くことができ、支局の目的の一つである当事者目線での報道に近づけたという。

 連載の前半は、小学生時代、絶滅寸前のコウノトリを見守った経験を持つ大人たちと、放鳥されたコウノトリをこれから見守っていく子どもたちの交流などを紹介した。後半は将来の課題を見据え、コウノトリが姿を消す要因となった田んぼの農薬や化学肥料の問題を指摘した。現在、同県では環境に配慮した米作りが進んでいる。街の消費者がどんな米を買い、食べるのか。その選択が農業や里山の環境を支える鍵を握っていると報じた。

 西脇氏は、県全体の関心をどう高めるかが連載の課題だったと語る。その上で、「コウノトリが住める環境は他の生物、人間にとっても住みよいはずだ。街の消費者の選択がそうした環境を作り、中山間地域の活性化につながっていくことを伝えたかった」と強調する。(斎)

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