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10月10日付 福島産米の誇り復活の道探る 

福島民報「風評の現場」

 東京電力福島第一原発事故から6年半。福島県を取り巻く様々な「風評」は消えていない。例えば県産米。一俵(60キロ)当たりの取引相場は今も全国平均を千円程度下回る。第1部はコメの価格が戻らない理由を生産農家、集荷、卸売、小売の各業者を取材し探った。9月19日付から全9回。菅野龍太編集委員がデスクを担当した。

 鏡石町の和田和久さんが育てるコシヒカリの販売額は事故前の5~6割程度まで落ち込んだ。最盛期に約70件あった直売先も10件に満たない。配送用段ボールに産地名の表示はない。「かつては『福島産』の3文字が誇りだったのに」

 他方、卸売業者には重宝がられている。神奈川県のある業者は福島米の扱い量が事故前と比べ約200トン増えた。全量全袋検査で安全性は保証済み。他の地方産と混ぜ合わせ「国産」と銘打てば「福島」の名は表に出ない。そこにあるのは冷徹な市場原理のみ。品質が良く安いコメとして「市場の中にパズルの1ピースとしてはめ込まれてしまった」と記した。

 事故に翻弄(ほんろう)されてきた農家はこれからどこに向かえばいいのか。菅野氏は「払拭(ふっしょく)したい一心で『風評』という言葉を安直に使っていたかもしれない」とこれまでの報道を振り返る。今後は県内の農家や集荷業者のために「どんなブランドを構築するのか、どんな売り方をするのかを紙面で考えていく」と話す。

 取材は主に報道部の県政担当記者が担った。自身も農政担当だった菅野氏は「農協や県に取材しても流通の全体像はつかめない。足を使い現場を回ることで、記者の成長にもつながったのではないか」と語った。

 多くの業者が会社名や実名の掲載に応じなかった。その構造は菅野氏が取材していた頃と変わらない。「コメ流通業界はやはり取材のガードが高い」と苦笑した。(海)

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