5月14日付 日本の主張、盛り込めるか

不利な立場、はね返して

 日米両政府は4月12日、日本の環太平洋連携協定(TPP)の交渉参加に向けた合意文書を発表した。自動車分野では日本側が大幅譲歩した。強い反対の声が上がっていた農業分野では、「日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品といったセンシティビティー(重要項目)が両国にあることを認識する」と明記された。しかし、米政府が公表した合意文書では農産品について明確に言及されていない。日本の交渉参加は最後発という不利な立場にもある。交渉で、どこまで日本の主張を盛り込めるかが焦点だ。約40社の論調について、翌13日付紙面の社説・論説を軸にまとめた。

国益確保へ決意を

日経は見出しで「TPP交渉これからが国益高める本番だ」として、次のように論じる。「国内市場に聖域を設け、競争力が弱い産業を保護することが、最優先の国益ではないはずだ。(略)新しい成長産業を生み出す仕組みを築くことこそが最も重要な国益である」

産経は「政府は最大限の国益を確保するため、しっかりと『攻めの交渉姿勢』を貫いてほしい」。毎日は「『国益』確保のために、一段の交渉力強化を求めたい」。

次の3社も見出しに「国益」を取った。

下野は「政府は、最後発で交渉に参加するという不利をはね返し、国益を拡大できるよう不退転の決意で交渉に臨んでもらいたい」。山陽は「合意内容には米国への大幅譲歩も目立つ。約束通り『国益』を守ることができるのか、本交渉の行方は予断を許さない」。南日本は「出遅れを取り戻して『国益』を死守するには、不退転の決意で『タフな交渉』を進める必要があることを肝に銘じてほしい」。

急がれる農業強化策

日本農業は3月30日~4月23日に集中して取り上げた。13日は「日本は7月にも交渉に参加する見通しだが、農林水産物の重要品目を堅持し、国民の命や暮らし、国家主権を守り抜く交渉力が、この米国追従の外交姿勢のどこにあるというのか」と主張した。

北海道は「日本が関税撤廃の例外をめざすコメ、麦、乳製品、牛肉・豚肉、甘味資源作物の重要5品目の具体的な扱いについては、今後の交渉に先送りされた格好だ。(略)交渉入りした場合はその行方を冷静に見極め、約束を果たせなければ速やかに脱退を決断すべきである」。

「島根農業に壊滅の危機」と見出しを立てたのは4月1日の山陰中央だ。次のように訴える。「高齢化に追い打ちをかける農業の衰退は集落の消滅につながりかねない。生産だけでなく生活まで影響が広がる島根の実情に目を向けるべきだ」。東奥は「安い海外農産品が日本に入ることで農業への打撃は明白だ。最低限である重要5品目を守れなければ農業、さらには本県農村部など地域の衰退に拍車がかかろう」。

読売は「政府は、したたかな戦略で交渉に当たってもらいたい。なにより大事なのは、自由貿易の拡大でアジアなどの活力を取り込み、日本の成長に弾みを付けることだ」とした上で、「交渉と並行して、一段の市場開放による国際競争に備え、農業強化策を急ぐ必要がある」と押さえた。

河北は「参加表明で出遅れた。早く交渉のテーブルに着いて主張を反映させたい。そう焦る日本は足元を見透かされた」とし、「詰めなくてはならない議論が短期間に集中する。ここでも日本は、時間とのせめぎ合いを強いられる」と指摘した。高知は「後発国ほど不利な条件下に置かれるといわれている」と指摘した上で、「不利をはね返して譲れない国益を守り抜かなければならない」と論じた。

米国ペースの事前協議

米国との事前協議を「すでに力の差が表れた」と指摘したのは宮崎日日。「『国民との約束は必ず守る』と誓った安倍政権は、最後発で交渉に参加する不利をはね返さなくてはならない」

「米国との事前協議で見えてきたのは、明らかに相手方のペースで進んでいることだ」と中国。「このペースでずるずる押し切られるようなら、日本国内で交渉撤退論が強まってくるのは必至だろう」

朝日は「『聖域』にこだわるあまり、早くも米国ペースになっている」と指摘。「『高い水準の自由化』というTPPの旗印に背くような合意をしたり、国民の安全にかかわる規制をいたずらに緩和したりしては、TPPへの疑念を広げる。大事なのは、国民全体にとっての利益である」と書いた。

中日・東京は「中国が経済でも脅威とならないよう新ルールの網で包み込む。それが米国の戦略だ」と指摘した。さらに「米国と途上国などとの仲介も、日本が担うべき役割の一つだ」と提案した。(審査室)

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