6月 4日付 改憲論議の成熟度を問う

発議要件の緩和に賛否

 安倍晋三首相が憲法改正を主張し、夏の参院選の争点とする意向を表明した。タブー視されてきた憲法改正が具体化する可能性が高まったことから、5月3日の憲法記念日には約50社が憲法改正の是非などについて社説・論説を展開した。安倍首相は当面、96条を改正して改憲の発議要件を衆院3分の2から過半数に緩和し、その後、戦争放棄などを規定した9条など個々の条項を改正する方針のようだ。3日前後の紙面を中心に、各紙の論調をまとめた。

2紙が96条改正支持

改正を支持したのは産経と読売。産経は11日社説で96条改正に反対する声に「憲法改正を求める多くの国民の意向をないがしろにし、現実離れした『不磨の大典』を守り抜く硬直的な姿勢と言わざるを得ない」「発議要件を『過半数』に引き下げることで、改正への民意をくみとることができるという考えは極めて妥当」と主張した。読売は10日社説で「日本の憲法は世界でも指折りの改正困難な硬性憲法である。制定後、一度も改正されていないのはその証左だ。内外情勢の変化に的確に対応するには発議要件緩和が必要との考え方は支持できる」と書いた。

日経は96条改正に対する明確な賛否は表明していないが、改正する場合、「その先の具体的な改憲の道筋」を明らかにする必要があるとして次のように指摘する。「96条改正によって改憲しやすくしたあとに、何をテーマにどんな段取りで進めていくのかを示さなければならない」「入り口が96条で出口が9条なら、もっと堂々と改憲議論を挑むべきだろう」

朝日は96条改正反対の立場を鮮明にした。「そもそも、憲法とは何か。憲法学のイロハで言えば、権力に勝手なことをさせないよう縛りをかける最高法規だ」とし「9条改正以上に、憲法の根本的な性格を一変させるおそれがある」と主張。毎日は見出しに「96条の改正に反対する」と掲げ「外国と比べて改憲条件が厳しすぎる、というのも間違いだ〈中略〉問われるべきは改憲手続きではなく、改憲論議の質と成熟度だ」と説いた。

山梨日日は「96条改正派は、国会の発議要件緩和によって国民投票に現実味を持たせるとする。ただ、国民投票法には、投票が有効になるための最低投票率の定めがない。〈中略〉それで国民の手に憲法を取り戻すことになるのだろうか」と指摘。西日本も「『多くの国家が何度も改正をしている』『一度もしていない日本はおかしい』といった理由でハードルを下げようというのだが、本末転倒ではないか」と批判した。

神奈川は「改正発議のハードルが下げられた場合、自民党の憲法改定の動きが草案の範囲を超えて加速する懸念が拭えない」とクギを刺す。長崎は「今の『ねじれ国会』は例外的な状況で、『各議院の過半数』は通常、政府・与党が常にクリアしているはずの条件だ。発議要件を緩和してしまえば、政権担当者はいつでも、都合よく憲法改正を発議できる」と指摘する。

「9条の『たが』あってこそ」

東京・中日は自民党の憲法改正草案について「前文では抽象的な表現ながら、国を守ることを国民の義務とし、九条で国防軍の保持を明記しています」と指摘し「九条を変えないと国が守れないという現実自体がないのです。米国の最大の経済相手国は、中国です。日中間の戦争など望むはずがありません」と訴えた。

琉球は「改憲派は『押し付け憲法』を批判するが、それなら占領軍の権利を事実上残した日米地位協定を抜本改定するのが先であろう」「平和主義はもちろん『国民主権』も『基本的人権の尊重』も適用されていない。まずは現憲法の3原則を沖縄にもきちんと適用してもらいたい」。中国は「憲法を生かした平和外交の積み重ねは重い」「日米同盟に傾斜しながらも、日本は独自の平和主義路線を歩み、国際的にも支持されてきた。9条という『たが』があってこそだろう」と主張した。

復興への関心低下を懸念

被災地の新聞は、復興の現状の観点から憲法を論じた。

河北「憲法を改めることが、思うに任せない復興を加速させるてこになるわけではなく、論戦が激しさを増し焦点化すればするほど、被災地再生への関心がかすんでしまうことを懸念する」「憲法順守の義務を負う国は震災復興を最大の責務と受け止めるべきだ」

福島民報「東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の発生以来、住民の自由や権利が脅かされる状況が依然として続く。二五条に掲げられた〈健康で文化的な最低限の生活〉を、まず回復し、しっかり保証していくのが国や政治の役目ではないか」(審査室)

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