10月 1日付 真の復興を世界に示せ

安全の国際公約は重い

 2020年の第32回夏季オリンピックとパラリンピックの開催地が東京に決まった。7日の国際オリンピック委員会(IOC)総会で、イスタンブール、マドリードを大差で破った。「安心、安全で確実な五輪」を訴え、心配される東京電力福島第一原発からの汚染水漏れには、政府が安全を確保することを、安倍晋三首相が約束した。約50本の社・論説が取り上げた。

原発汚染水対策に全力を

読売「一つはオールジャパン体制で臨めた点だ。政財界が招致を全面支援した。五輪開催に対する国民の支持率は、2016年五輪の招致時より大幅に上昇した。メダリストら招致委員会のメンバーによるIOC委員への積極的なロビー活動も功を奏した」。

毎日「(安倍首相も)『状況はコントロールできている』(略)と懸念の払拭(ふっしょく)に努めた。だが、2年半が経過しても事故処理の見通しがつかない現状を見れば、事実関係とその認識は極めて疑問だ。メディアを通して世界中に発信される言葉の重みと責任を自覚せねばならない」、静岡「福島県沿岸の漁業者は漁ができないままだ。原発事故の周辺では住民の多くが帰還できる見通しさえない。これでどこが『問題ない』と言えるのか。安倍政権は汚染水問題をはじめとする原発事故対策に全力を挙げるべきだ。五輪開催に浮かれている時ではない」、産経「汚染水処理については東電任せにすることなく、政府が前面に立って事態を収束させる責任がある」、信濃毎日「汚染水対策を含め、事故収束の見通しも立っていない。何を根拠に首相はこう言ったのか、理解に苦しむ。(略)深刻な現状とは程遠い認識である。五輪招致のための政治的な発言との批判は免れまい」、東京・中日「(安倍首相発言は)説得力を欠く。(略)招致を有利に運ぶための方便だったのではないか。疑念を晴らすには情報を公開しつつ有効な手だてを素早く講じることだ」、高知「原発の汚染水漏れが、『コントロール』できているのなら、安倍首相はまず地元福島の住民、そして国民に向けて状況を詳しく説明すべきだ。(略)よもや五輪招致の鍵を握るIOC委員へのアピールを第一に考え、言葉が先走ったのではあるまい」、福島民報「首相の言葉はあまりにも重い。全世界に誓った国際公約だ。必ず実現してほしい。本県から見ると、これまでの政府の対応は場当たりに映る。(略)東電任せの汚染対策が、五輪招致問題で一気に尻に火が付いた観を否めない。(略)抜本的対策には世界の英知と、多額の国費を投入する必要がある。決意だけでなく、本気度、実行力を見たい」。

岩手日報「(今後)五輪に向けての動きが活発化する。しかし、東日本大震災の復興を減速させてはならない。(略)本県沿岸部の復興も遅々として進まない。むしろ、五輪開催が決まった今こそ、震災復興の加速が必要だ。(略)五輪が優先され、震災復興予算が削られることがあってはならない」、北海道「鉄道や道路などの整備構想も浮上しているが、慎重な検討が求められる。多大な国費投入は地方に財政的なしわ寄せをもたらし、東京一極集中をさらに進めるという点で、理解は得られない」、山陽「恩恵を、東京一極集中でなく、国内に広げていくことが大切だ。(略)地方の良さをアピールして外国人観光客の誘致につなげるなど、五輪開催がもたらす”果実”を広く共有できるよう知恵を出し合いたい」。

平和を紡ぐ努力重ねよ

京都「日本が五輪で発信しうる新たな価値観の鍵は、パラリンピックにあるのではないか。障害者スポーツの環境整備にとどまらない。日本は世界に先駆け、超高齢社会が到来する。(略)社会的なバリアーをなくす取り組みを含め、障害者や高齢者、弱者に優しい社会を築き、世界の人々をもてなし、一緒にスポーツを楽しみたい」、日経「7年後の五輪の開催をこの国、そして都市の未来を考える契機にしたい。(略)パラリンピックを機に『障害者が移動しやすい街』であることを世界に訴えるのもいい」。

朝日「五輪は『平和の祭典』でもある。外交関係が揺れる中国や韓国ともわだかまりなく交流できる雰囲気作りは欠かせない。一緒に夢を紡ぐ若者らの輪に国境の壁があってはならない。(略)官民挙げて未来志向の友好をめざしたい」、中国「スポーツは信頼醸成と平和への足掛かりにもなりうる。(略)広島市がかつて核兵器廃絶を目指して五輪招致を探った意味もそこにある。(略)ちょうど東京五輪の期間に広島と長崎は被爆75年の節目を迎える。内外の観客が被爆地も訪れれば、核兵器廃絶の願いを広く共有する機会ともなろう。そのためにも政府はアジアで平和を紡ぐ努力を重ねてほしい。『隣人』との関係を温め直し、国境を超えて素直に声援し合う。そんな五輪が見たい」。(審査室)

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