11月 5日付 一体改革の実現を

軽減税率導入の主張も

 安倍晋三首相が10月1日、消費税率を来年4月1日に、5%から8%へ引き上げると表明した。消費増税は橋本龍太郎内閣の1997年4月、3%から5%に引き上げられて以来、17年ぶりだ。企業向け減税や補正予算など5兆円超の経済対策も決定した。各紙2日朝刊では、社説などで、それぞれの立場から論じた。

増税に論調分かれる

産経は「安定的な社会保障財源の確保と財政健全化に向け、確かな一歩を踏み出した意義は大きい」と評価した。その上で、「国民に増税という負担を求める以上、政治も自ら身を切る覚悟を示すべきだ。予算削減などを通じた政府のスリム化を図ることも必要だ」と注文する。

地方紙では、佐賀の見出しがずばり「首相の決断、評価したい」。安倍首相が記者会見で「経済再生と財政健全化。二つを同時に達成するほかに私たちには道はない」と決意を示したことに言及し、「批判覚悟で増税実施を最終判断した。困難かもしれないが、首相の言葉通りになればと願う」と書いた。静岡は「社会保障の安定化と財政の健全化を目指す『社会保障と税の一体改革』が実現に向けて動き出したことは評価に値する」とした。

「やむをえない」との論調も全国紙、地方紙とも目についた。朝日は「やむをえない」とした上で、「政府の責任は、規制改革などで経済を成長させつつ、税金をしっかり集め、むだ遣いせず効果的に配分することだ。この三つの課題に向き合わなければ、増税への理解は得られない」と指摘した。地方紙では、デーリー東北、山梨日日、京都、徳島などだ。

中日・東京、北海道は増税の決断に厳しい指摘をした。「現時点での消費税増税には反対を唱えてきた」という中日・東京は「増税の意義がまったく見えない」と断じた。

北海道は経済対策が5兆円超に上る点を捉え、「これほど巨額の対策費が必要なら、増税自体に無理があったと言わざるを得ない。景気が回復軌道に乗るまで先送りすべきだった」と主張した。

8月31日の社説で「『来春の8%』は見送るべきだ」と主張した読売は、「首相が自らの責任で重い決断をした以上、これを受け止めるしかあるまい」と首相の判断を是認した。

全体としては、「本来の目的を忘れるな」(秋田魁)、「社会保障改革の理念忘れるな」(愛媛)、「『一体改革』の原点に返れ」(高知)など、「社会保障と税の一体改革」という「原点」に立ち返える点を強調した主張も数多く見られた。

復興法人税廃止に批判

首相が、経済対策の一つとして打ち出した復興特別法人税の廃止の1年前倒しについては、厳しい指摘が相次いだ。

信濃毎日は「あまりに企業優遇に走りすぎてはいないか。国民に広く負担を求める一方で、黒字企業の減税をするというのではバランスを欠く。まして復興財源になる復興特別法人税を廃止するなど論外だ」と断じた。

熊本日日は「これがなぜ、経済対策になるのか」と問う。「税負担軽減分が賃上げに回る保証はどこにもない」と指摘した。河北も「目的も効果も不確か」と書く。「減税分を賃上げに回すか否かは企業の判断いかんであり、どれほど効果があるかは分からないというしかない」とし、「『復興軽視』との批判は免れまい(略)代替財源があるなら、むしろ財政再建のために使うべきではないか」と主張した。

一方で理解や評価の論もある。法人減税により、「競争力や収益率を強化し、賃上げにつなげるという発想は理解できる」と北國。日経は法人減税の必要性を主張し、「復興特別法人税の廃止はその一歩だが、これだけで終わらせてはならない」とした。

食品など生活必需品の税率を低く抑える「軽減税率」導入の主張も数多くあった。

被災地の福島。福島民友は「県内には避難が長引く被災者も多い。幅広い消費者の負担を軽減させるために軽減税率の導入を目指すべきだ」とし、来春時点での適用を「前向きに検討してもらいたい」と主張した。

「本県のように中小企業の多い地方ではいまだにアベノミクスの効果を実感できず、給与引き上げに伴う所得増の期待も薄い」と書いた宮崎日日は「大都市との生活レベルの格差をこれ以上広げないためにも、生活必需品への軽減税率早期適用に前向きな検討があってしかるべきだ」と主張。「地方経済に目配りを」という論考も目立った。

毎日は「すぐに制度設計に取り組むべきだ」とし、新聞や書籍類の税率軽減に言及。欧州での状況をあげ、「『知識には課税しない』という考えは、だれもが情報を入手しやすい環境を整え、民主主義を支えるうえで不可欠だ」とした。(審査室)

ページの先頭へ