3月 4日付 手堅く現実的な都民の選択

「国の原発政策信任」には否定も

 猪瀬直樹前知事の辞職に伴う東京都知事選は2月9日投開票の結果、自民、公明両党が支援した元厚生労働相の舛添要一氏(65)が他候補を大差で破り、初当選した。ともに「脱原発」を訴えた前日弁連会長の宇都宮健児氏(67)が次点、元首相の細川護熙氏(76)は3位。各紙の論調をまとめた。

単一争点の戦略に限界

朝日は「急速な少子高齢化のなか、安心して暮らし、働けて、活気もある東京を、いかにつくるか。都民の大きな関心はそこにあった。6年後の五輪への備えも、大きな課題に違いない。福祉に詳しい大臣経験者の舛添氏なら手堅くさばいてくれると都民は期待したのだろう」と見た。「脱原発派」の敗因を毎日は、「確かに小泉氏が説くように大きな方向を示すことは重要だ。だが、最大争点に掲げた以上細川氏は『脱原発』を都政にどう反映し、実現するかをより具体的に語るべきだった」「原発一点ばりの戦略も限界があった。(略)社会保障など政策全般に詳しく、知名度の高い舛添氏が総合的に評価されたと言える」と分析する。

日経も「本紙の世論調査をみると、新知事に期待する政策として『医療・福祉』と『景気・雇用』を挙げる有権者が多かった。細川護熙元首相のように原発の是非を最大の争点に据える動きに対して、有権者は現実的な選択をしたといえよう」。

読売は「非現実的な『原発即時ゼロ』の主張に、多くの都民が拒否反応を示したと言えるだろう。(略)国政に関わる原発・エネルギー問題を首長選で争うのは、無理があったのではないか」と指摘。産経も「特筆すべきは、『脱原発』を最大かつ単一の争点にしようと、細川氏がいぜん国民に人気の高い小泉純一郎元首相と連携して訴えたものの、広く浸透させることはできなかったということである」「国政と都政の課題の違いを見きわめ、冷静な選択が行われたと評価できる」とし、「安倍政権は政府の責任で、安全性が確認された原発の再稼働を積極的に進めていく必要がある」と主張した。

脱原発問う意義大きい

しかし、岩手日報は「この結果で政権の原発政策が信任されたというわけではない。(略)わけても首相ら与党幹部が、表立って舛添氏を応援したのは選挙戦最終盤だった。選勢を見定めた上での『参戦』を、与党の勝利とするのは当たるまい」とくぎを刺す。山陽も「原発再稼働に反対した細川、宇都宮両氏が敗れたが、これによって原発をめぐる議論が決着したわけではない。政権与党側の『争点隠し』が奏功した面もあり、安倍政権の原発政策まで信任を得たとは言えないのは明らかだ」。さらに京都も「(安倍政権は)民意が原発にゴーサインを出したと勘違いしてはならない。『即時原発ゼロ』を訴える細川、宇都宮両氏の合計得票数は、舛添氏に匹敵する。舛添氏自身、『私も脱原発です』と言明し、原発に依存しない社会づくりを掲げてきた」。

県内に原発を抱える新潟は「首都圏に電力を供給してきた東京電力福島第1原発の事故は、いまだ深刻な被害をもたらしている。高レベル放射性廃棄物の最終処分場の設置場所も決まっていない。そうした状況の中で、わが国最大の電力消費地で原発が争点となり、脱原発を訴えた細川、宇都宮両氏の票の合計が舛添氏の票に迫った意味は大きい」と評価。信濃毎日も「電力源を他県に依存する一大消費地で、原発の是非が取り上げられた意義は大きい」とした。中日・東京は「バラ色の美辞麗句を振りまいた舛添氏と、後ろ盾になった安倍政権。その狙い目は、都民の意識をフクシマからそらすことにあったという見方もできる」「舛添氏も脱原発を公約したのだ。東京流の取り組みを披露してほしい。都民はフクシマ以前への回帰にお墨つきを与えたわけではないのだから」と主張した。

地方分権のリーダーに

このほか西日本は「都知事は自治・分権のリーダー役としての役割も大きい。医療や介護、雇用など暮らしに直結する政策課題でも先駆的なモデルを示してもらいたい」。北海道は「地方の立場からすれば(略)むしろ現状では東京の『一人勝ち』にならないかが心配だ。首都機能の分散も含めて将来のありようを幅広く論議してもらいたい」。高知は「福島第1原発事故は収束に程遠く、恩恵を受けてきた電力消費地は原発に関心を持ち続ける必要があろう。都知事選を通じて都民のみならず、広く国民がエネルギー政策を考えた意義はやはり大きい」と総括した。(審査室)

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