4月 1日付 理研は全容解明を急げ

最先端科学の報じ方に課題

「教科書を書き換えるような大発見である」

「生物学の常識を覆す画期的な発見」

「日本の女性研究者の独創が、生命科学の常識を覆した」

理化学研究所(理研)などのチームが、まったく新しい万能細胞「STAP(刺激惹起〈じゃっき〉性多能性獲得)細胞」の作製をしたと伝える1月31日の在京各社の社説には、こんな言葉が躍った。しかし、その研究成果をまとめた論文には発表直後から、さまざまな疑義が浮かび、理研は3月14日の記者会見で「重大な過誤がある」と認め、共著者に論文の撤回を求めた。

STAP細胞の存在自体は現時点では完全に否定されたわけではないが、日本発の「大発見」への期待が強かっただけ、失望は大きかった。15日紙面を中心に「なぜ、このような事態に至ったのか」について徹底的な解明を求める社説が掲げられた。

遅く甘い対応に批判

毎日は「全容解明し説明尽くせ」の見出しで、「それにしても、なぜ、これほど不備の多い論文が国内トップレベルの研究所から公表されてしまったのか。(略)論文の共著者のチェック機能が、なぜきちんと働かなかったのか。理研は検証を急ぐ必要がある」と論じた。

日経も「ずさんな内容を含む論文がなぜ発表されてしまったのか、理研は早期に真相を解明し公表すべきだ」と迫った。

多くの社が、同様の主張をした。

「今後、STAP細胞の存在有無を含め全容の徹底解明をしなければ、失った信用は回復しない」(中日・東京)、「理研は徹底的に事実関係を調べた上で改めるべき点は改め、研究への信頼を取り戻すべきだ」(山梨日日)、「理研と所管する文部科学省は真相を解明し、研究体制や組織の問題点を明らかにする責務がある」(京都)、「最終報告に向けた検証は、透明さと厳格な手順が求められる。一つ一つの段階で明快に説明してほしい」(高知)。西日本は「日本の科学に対する国際的な信頼は大きく揺らいでいる」と危惧し、「あらゆる問題点を洗い直し、再起を図るべきだ」と求めた。

理研の対応の遅さや甘さへの批判も目についた。

「論文への疑念に対する理研の対応にも、問題がある。画像の重複使用などについては当初、単純ミスとみなした。危機管理意識を欠いていると言わざるを得ない」と読売(12日)は断じた。

北海道は「研究の根幹部分が揺らいで1カ月以上がたつ。遅すぎた判断と言わざるを得ない」とした上で、「危機管理意識の希薄さにはあきれるばかりだ」と指摘した。琉球も「理研の対応は迅速性に欠け、多くの疑問に答えていない」と批判した。

産経は「日本を代表する研究機関でありながら、批判に真摯(しんし)に向き合う意識が欠けていたのではないか」と論じた。

「『成果偏重』に陥ったのでは」との視点から論じたのは河北だ。

「研究者であれば誰しも、世界に向けていち早く論文で成果を公表したいと望むだろう。それは自然な感情だが、激烈な競争の中で成果を迫られれば、時に自分を見失うような状態にもなりかねない。研究機関には研究者と冷静に接しつつ、論文の決定的な誤りや不正を防ぐ責任があるはずだ」

愛媛も「先端的研究には膨大な費用が必要で(略)研究者間の激しい獲得競争やプレッシャーがあるとも漏れ聞く。(略)専門家とはいえ仲間内で評価し合うレビューシステムの限界についても、この機に議論し、是正に取り組むべきだろう」と指摘した。

手のひらを返した報道

一連の報道について、メディア自身のありように触れたのは朝日だ。

「朝日新聞を含む報道機関にとっても重い事態である。検証の難しい最先端科学の報じ方はどうあるべきか。不断に見つめ直す努力を肝に銘じたい」

南日本も報道の在り方に触れた。「今回のような科学的な新発見は専門家による確認がなされて初めて成果が確立する。一連の報道がそうした条件付きの成果であることを軽視した面は否めない」

さらに研究ユニットリーダーの小保方晴子さん一人に「スポットライトを当てて、スターのような扱いをしたのに、論文の疑義が出た途端に手のひらを返したような報道があふれた」と指摘し、「謙虚に反省したい」と書いた。

中国は、小保方さんを「リケジョ」という言葉を使って、「時代のヒロイン扱いする報道を先行させてきた」と自らを振り返った。そして、次のように結んだ。「科学報道の在り方を考える契機としたい」(審査室)

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