5月13日付 「原発ゼロ」転換を批判

現実路線に評価も

 政府は4月11日、中長期のエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」を閣議決定した。原発を「重要なベースロード電源」と位置づけて将来的に再稼働させる方針を明記し、民主党政権の「原発ゼロ」政策を転換した。再生可能エネルギーの導入推進は、2009年と10年に政府が示した「20年に13.5%」「30年に約2割」の目標を参考として注記に示した。核燃料サイクルは推進する方針を維持し、高レベル廃棄物の問題解決に向け国が前面に立って取り組むと強調している。

再生エネの開発優先が筋

各紙とも閣議決定前後に社説を掲げた。「原発ゼロ」方針の転換を批判する論評が多かった一方、エネルギー安全保障の観点などから現実路線を取ったことを評価する社説もあった。

中日・東京は「安倍政権は、原子力規制委員会が審査を終えた原発の再稼働を急ぐ方針だ。”神話”も、3・11もなかったかのように、である」と批判。風力や地熱、太陽光発電などの潜在能力の高さを挙げて「再生可能エネルギーは、地域の可能性である。原発維持は、その可能性を潰(つぶ)しかねない」と指摘した。朝日は「もう原発に依存できないことは電力会社もわかっているはずだ」「(原発の)新増設より、同じ機能をもつ地熱や水力、高効率の石炭火力などの開発を優先させるのが筋だ」と主張する。

信濃毎日は「国民の大半が近い将来の脱原発を求めてきた」「国民の声を無視して閣議決定することは認められない」と非難。熊本日日は、安倍首相が1月の施政方針演説で「再生可能エネルギーの最大限の導入を進め、原発依存度を可能な限り低減させる」と明言したことを挙げ「具体的な数値目標も道筋も示されないあいまいな計画では、再生可能エネルギーに対する企業の投資意欲も、家庭の省エネ協力も十分に引き出すことはできまい」と論評した。

毎日は「原発など電源別比率の数値目標は盛り込まれず、将来像はぼやけたままだ。これではとても指針にはなるまい」「政府は国民の理解を得ながらエネルギー政策の具体化を急ぎ、原発に依存しない社会への道筋を示していくべきだ」と主張した。福島民友は「『決意』忘れず政策遂行せよ」の見出しで「何より重要なのは、本県が見舞われたような過酷な原発事故を二度と起こさないことだ」と説く。「『原発ゼロ』方針と決別したが、国民に丁寧な説明がなされているのかという視点を忘れてはならない」とクギをさす。

「計画の中で目立つのは、原発に関して『国が前面に立つ』との表現が多用されている点だ」と指摘したのは北海道。原発の過酷事故に対する避難計画を持たない自治体が多いことを挙げ「有効な避難計画の作成にこそ国が責任を持つべきだ」「むしろ国が前面に立つべきは、送電網の拡充など、再生可能エネルギーを最大限導入するために欠かせぬ条件整備ではないのか」と主張した。このほかも「原発回帰は受け入れ難い」(下野)、「フクシマを忘れたのか」(沖タイ)、「事故の反省が全く見えない」(愛媛)、「福島の教訓、思い起こせ」(秋田魁)などの見出しで論評した社説が多かった。

描けぬ将来像

注文を付けながら今回の基本計画を評価したのは日経、産経、読売など。日経は原発が停止し発電量の9割を火力に頼っている現状を指摘し「原発について一定の位置づけを示したのは現実的といえる」とする一方で、「この計画で安定供給ができるか、産業競争力や国民の生活水準を維持できるか、温暖化防止への配慮は十分か。説得力をもって将来像を描けていない」と懸念を表明。再生可能エネルギーについて「風力、地熱を含めてバランスよく伸ばすには全国規模の送電網が要る。送電網に多くの事業者が接続すれば、競争や創意工夫でコストが下がる可能性がある」など、具体的提言をしている。

産経は「民主党政権下でとられた無責任な脱原発から脱却したことは評価したい。問題は、原発の運転再開への道筋がいまだに見えないことだ」と、政府に対し原発再稼働に向けて立地自治体の同意取り付けなど「責務」を果たすよう要求した。読売も「民主党政権が掲げた『脱原発路線』に、正式に決別する妥当な内容と言える」と評価したうえで「再生エネの拡充は必要だが、目指すべき最適な電源構成の全体像をまとめる前に、再生エネだけに数値目標を掲げたのは疑問」と指摘。高速増殖炉「もんじゅ」を核廃棄物の減量や有害度低減などの国際的な研究拠点として位置づけたことについて「核燃料サイクルの着実な推進への追い風としたい」とした。(審査室)

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