7月 1日付 拉致問題の前進に期待

制裁の一部解除に懸念も

 北朝鮮が拉致被害者や拉致の疑いのある特定失踪者を含む日本人の安否を包括的かつ全面的に再調査すると約束した。調査が始まった時点で、日本が北朝鮮に科している人的往来や送金、船舶の入港規制など独自制裁の一部を解除することで両政府が合意。日本国内では「今度こそ」と再調査への期待が膨らむ一方、これまで不誠実な対応を繰り返してきた北朝鮮が相手だけに、先行きに懐疑的な見方も根強い。各紙の論調をまとめた。

調査の進め方に注文

 北朝鮮の真意は慎重に見極めていく必要があるものの、再調査の合意そのものについては、前向きに捉える意見が全体として目立つ。信濃毎日は「拉致問題について北朝鮮はこれまで『解決済み』としてきた。今回、この立場を変えたのかどうかははっきりしない。それでも、再調査に合意したことは前進と受け止めたい」と期待する。「これまで膠着状態が続いていた拉致問題が前進することは歓迎したい」(静岡)、「解決への機運が高まりつつあるのは事実だろう」(神戸)などの評価も多い。

 調査の内容や進め方には注文がついた。対象が拉致被害者以外にも広がったことに、中国は「新たな調査は拉致の疑いのある行方不明者や『日本人妻』などを含むのがポイントだ。こうした人たちの確認や帰国には結びつくかもしれない。一方で横田めぐみさんをはじめ、日本政府が従来認定する拉致被害者の消息が置き去りのまま『幕引き』される恐れはないのだろうか」と疑問を呈する。

 期限を設けていない点について琉球は「北朝鮮がいたずらに調査を先延ばし、結果を小出しにして、日本の制裁緩和だけが引き出される『取られ損』の懸念も消えない」。さらに京都は「日本人が調査委に含まれないのも不満だ。(略)状況によって、日本側の参加を求めるべきだろう」とし、陸奥は「日本が携われる部分の自由度を最大限高めて北朝鮮の恣意(しい)性を極力排除し、日本人全員の帰国を実現させなければならない」と訴える。北海道は「日本政府は、きちんとした証拠に基づいているかなど、調査結果の信ぴょう性を慎重に判断しなければならない。曖昧な結果しか示されなければ、経済支援や大幅な制裁解除をすべきではない」と主張する。

人道支援は成果が前提

 今回の合意の特徴の一つは、北朝鮮が調査に着手するのと同時に、日本が制裁の一部解除に踏み切ること。産経は「この程度の合意で制裁を一部解除するのは時期尚早である。(略)再調査の結果が何ら分からない時点での制裁解除が、かえって北朝鮮に足元をみられることにつながらないか、危惧も大きい」と批判。日経も「人的往来の規制解除などに加え、人道目的とはいっても北朝鮮船舶の入港禁止を解除するのはいかがなものか。制裁に苦しむ北朝鮮に物資や資金を流す秘密のルートとして利用され、国際社会による包囲網の抜け穴となる懸念があるからだ」と異を唱える。

 これに対して読売は「再調査だけで、制裁の一部を解除することに、日本国内では疑問の声もある。だが、制裁解除の約束なしでは北朝鮮の譲歩を引き出すのが難しかったのも事実だ」としつつ、「政府は、具体的な進展を見極めつつ、慎重かつ段階的に制裁を緩める必要がある。人道支援は、重大な成果を前提とすべきだ」とクギを刺す。西日本は「『調査開始』だけで見返りを与えるのはリスクもあるが、双方が約束を守ることを確認しつつ、次の段階に進むという戦術なのだろう」とみる。

国際社会と連携して

 北朝鮮が核・ミサイル開発や人権問題などで国際的に孤立を深める中での日朝交渉だけに、日本政府は難しいかじ取りを迫られる。中日・東京は「もし北朝鮮が四度目の核実験や長距離弾道ミサイル発射を強行すれば、日朝交渉を続けるのは難しくなる。安倍政権は関係国に拉致問題への取り組みを伝えながら、核、ミサイル開発を止めるよう、特に米国、韓国との連携を強めるべきだ」と説き、愛媛は「日本が国際情勢や外交バランスを考慮し拉致問題の解決に至れば、北朝鮮の強硬姿勢にくさびを打ち込む契機になろう」と論じる。

 毎日は「首相が前のめりになるあまり性急にことを運べば、北朝鮮に足元を見られかねない。一方で、拉致被害者家族の高齢化が進み、被害者の早期帰国が待たれる。北朝鮮の核・ミサイル開発に厳しく対処する国際社会との連携も忘れずに、焦らず着実に成果をあげてほしい」と求め、朝日は「日本政府には、北朝鮮の内部事情を探りつつ、硬軟両面でのしたたかな外交が求められる。制裁緩和を活用し、北朝鮮が誠実に対応せざるをえないような状況をつくる工夫が要る」と指摘する。(審査室)

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