8月 5日付 「暴挙」か「適正化」か

全国紙二分、地方紙は批判的

 政府は7月1日の臨時閣議で、従来の憲法解釈を変更し、限定的に集団的自衛権の行使を容認することを決めた。安倍晋三首相は会見で「憲法が許すのは、わが国の存立を全うし国民を守るための自衛の措置だけだ」と述べた。安全保障政策の大転換となる決定に、全国紙の論調は割れたが、地方紙の大半は批判的だった。2日の社説を中心に各社の論調をまとめた。

「解釈改憲」認識に差

 「暴挙」「暴走」を見出しに掲げた社は10を超えた。朝日は「閣議決定は、『できない』と政府が繰り返してきたことを『できる』ことにする、クロをシロと言いくるめるような転換だ。まごうことなき『解釈改憲』である」と主張する。信濃毎日は「必要があるなら国民投票にかけ憲法を変えるのが筋だ。憲法は権力を縛るものなのに政権が思うまま解釈を変えられるのでは、意味がなくなる」。秋田魁も「このような解釈がこのまま許されるのであれば、改憲という正当な手続きを経ずして、9条以外の条文も国家権力が都合よく書き換えることが事実上可能になる」と危惧する。

 一方、読売は「新解釈は1972年の政府見解の根幹を踏襲し、過去の解釈との論理的整合性を維持しており、合理的な範囲内の変更である。本来は憲法改正すべき内容なのに、解釈変更で対応する『解釈改憲』とは本質的に異なる。むしろ、国会対策上などの理由で過度に抑制的だった従来の憲法解釈を、より適正化したと言えよう」と賛意を示した。福島民友は「『他国への攻撃であっても日本の存立を脅かすことも現実に起こり得る』との政府の指摘は現実的」と評価した上で、「何より、憲法が掲げる平和主義を堅持し、行使の要件とした事態を招かないための外交努力に心血を注がなければならない」とした。

戦争への道開く懸念も

 日本が戦争に巻き込まれる可能性を指摘する論調も目立った。河北は冒頭で「平和国家を象徴する憲法9条が改正手続きを経ることなく空文化し、『戦争のできる国』の扉が開いた日として振り返ることを覚悟すべきかもしれない」と書く。毎日は日英同盟を根拠に第1次世界大戦に参戦した歴史をひもとき「『国の存立』が自在に解釈され、その名の下に他国の戦争への参加を正当化することは、あってはならない。同盟の約束から参戦し、『自存自衛』を叫んで滅んだ大正、昭和の戦争の過ちを、繰り返すことになるからだ」と指摘する。山陽は北朝鮮の核や尖閣諸島をめぐる中国の動きに備えるのは当然と説きながら「再び戦争に道を開きかねないという懸念が根強くある」と拡大解釈の恐れを訴える。琉球は「集団的自衛権の本質は、日本が攻撃されていないのに参戦するということだ。すなわち自衛隊が海外で他国の人を殺すことである。他国が日本を攻撃する危険性が高まるのは必然だ」。

 それに対し日経は「一部からは『海外での戦争に日本が巻き込まれかねない』といった不安も聞かれる。しかし、日本、そしてアジアの安定を守り、戦争を防いでいくうえで、今回の決定は適切といえる。国際環境が大きく変わり、いまの体制では域内の秩序を保ちきれなくなっているからだ」と決定の妥当性を説く。北國も「日米同盟の『片務性』は、米国が圧倒的な軍事力を誇示した時代には通用したかもしれないが、軍事大国化する中国や、核ミサイル開発に余念のない北朝鮮の脅威が顕在化した今、米国頼みでは対処しきれない」。

時間かけた国民的議論を

 自衛隊の海外活動拡大に懸念を示すのは中日・東京だ。「安保政策見直しは、いずれも自衛隊の軍事的役割と活動領域の拡大につながっている。その先にあるのは憲法九条の下、必要最小限度の実力しか持たず、通常の『軍隊』とは違うとされてきた自衛隊の『国軍』化であり、違憲とされてきた『海外での武力の行使』の拡大だろう」

 産経は「安倍首相が説明するように、今回の改革でも、日本がイラク戦争や湾岸戦争での戦闘に参加することはない」とした上で「自衛隊が国外での武器使用や戦闘に直面する可能性はある。自衛隊がより厳しい活動領域に踏み込むことも意味すると考えておかねばならない。どの国でも負うリスクといえる。積極的平和主義の下で、日本が平和構築に一層取り組もうとする観点からも、避けられない」。

 西日本は首相が5月15日に検討開始を表明してから1か月半の与党協議で決定したことを「何より重大な問題と指摘したいのは安倍政権の政治手法である」と批判する。宮崎日日は「今後政府は、閣議決定の方針に従って法的整備を進める。国会審議のみならず、時間をかけた国民的議論が必要だ」と政府に国民が納得する説明を促した。(審査室)

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