11月 4日付 言論機関の決意を表明

朝日誤報問題に各社言及

 今年は新聞界へのかつてない逆風の中で、67回目の新聞週間(10月15~21日)を迎えた。朝日新聞の一連の誤報問題で新聞への信頼が揺らぎ、産経新聞の前ソウル支局長は韓国内で在宅起訴された。多くの新聞社が社説で言論機関としての決意をそれぞれに表明した。

「他山の石」として

 大半の社説が、朝日が従軍慰安婦をめぐる証言報道や東京電力福島第一原発事故の「吉田調書」報道について誤報と認め、記事を取り消したことに言及した。

 読売は「真実を追究し、正確かつ公正に報じる。新聞の在り方が、今ほど問われている時はない」と書き出し、朝日の報道に対し「国による強制連行があったとの誤解が世界に広がり、日本の国益を損ねたことは間違いない」「問題点を洗い出し、再発防止策を講じることが求められる」と注文した。

 デーリー東北は慰安婦証言が取り消されるまでに32年を要した点を重視し「誤報の訂正をちゅうちょした背景には、記者と新聞社の『正義』感の過剰が読み取れる。ひとたび『正義』と思い込むと、それを打ち消す事実と謙虚に向かい合うことができなくなる」と指摘した。熊本日日は「朝日の問題を『他山の石』として、自らを律する必要がある」と戒めた。

 一方、朝日が慰安婦報道を誤報と認めて以降、週刊誌などが「国賊」「売国奴」などの見出しで「朝日たたき」を続ける現状には懸念を示す社説が少なくなかった。

 信濃毎日は「戦前から戦中にかけ国策に異を唱える声を封じるのに使われた言葉が今、ためらいもなく活字になる。報道界全体の信頼が失われかねない状況だ」と危惧した。北海道も「批判は切磋琢磨(せっさたくま)のため大事ですが、度がすぎると報道機関全体の信頼を掘り崩すと同時に公権力の介入を招きかねません」と警告した。

 日経は「世の中にはいろんな考え方の人がいて、それをお互いに認め合い、自由な発言を許し、言論には言論で応じていくのがわれわれの社会の大前提のはずだ」と書き、言論機関の任務は極端な議論に対して中和性を与えることだという石橋湛山の言葉を紹介した。当の朝日は「社会を単色にはしない」の見出しで「新聞の役割は、意見の対立をあおることではない。考える材料をいかに社会に提供できるかにある」と強調した。

 韓国大統領についてウェブサイトにコラムを掲載した産経前ソウル支局長が名誉毀損(きそん)に問われたことに、産経は「権力を恐れず、俗論におもねらず、外国や特定勢力に気兼ねすることなく言論機関の使命、役割を果たす」と改めて宣言した。沖タイも「自由な取材の権利を侵害し、報道の自由を脅かす疑いがある。行き過ぎだ」「日韓関係にも暗い影を落としている」と憂慮した。

秘密保護法施行に懸念

 昨年から今年にかけ、特定秘密保護法、集団的自衛権の行使容認などで安倍政権をめぐる評価が新聞によって大きく二分されてきた。そんな中、「知る権利」が損なわれるとの観点から、特定秘密保護法の12月10日施行に深い懸念を示す地方紙の社説が目立った。

 琉球は「沖縄から見れば集団的自衛権行使容認と同じく、特定秘密保護法も日本が戦争への道を歩むための動きだと警戒するのが自然だ」と批判し、「廃案」を求めた。中国は、同法成立後に問題点を批判する報道が大幅に減っているとの指摘があるとし「報道機関として、正面から受け止めなければならない」と反省を込めた。

 消費税の再増税問題を取り上げたのは山形だ。業界を挙げて知識の普及に資する新聞や書籍、雑誌などへの軽減税率の適用を求めている現状を説明し「購読者の負担軽減に努めていきたい」と読者に理解を促した。

 認知症で行方不明になった人が自分の名前を話せず身元不明者として施設に入居している事実を掘り起こし、今年度の新聞協会賞を受賞した毎日は「保護する警察と、引き渡しを受ける自治体との連携不足が、身元の早期確認を遠ざけていた。日常生活の足元にある問題を探りあてる報道の重要性がここにある」と身近なテーマを調査報道する意義を説いた。

記事でふるさと元気に

 「ふるさとが 元気と知った 今日の記事」が今年の新聞週間の代表標語だった。「こんな記事を読者の元に届けられるようなふるさとであり新聞でありたい」(山梨日日)▽「県民と県民をつなぎ、福島に思いを寄せる人と県民をつなぎ、明日へとつなぐ紙面づくりに全力で取り組む」(福島民報)▽「人口減少時代に徳島はどうあるべきか。新たな価値観を見つけ、ふるさとを元気にしようとしている人たちの姿をたくさん伝えたい」(徳島)……。多くの地方紙が社説で地域の読者に率直に語りかけた。(審査室) 

ページの先頭へ