1月13日付 戦後70年、多彩な視点で

脱・一極社会、働き方の現状も

 戦後70年の節目となる2015年。国内では昨年末の衆院選で勝利した安倍政権が経済再生で正念場を迎えるほか、内政・外交のさまざまな懸案に直面する。世界では米国の影響力低下とともに、従来の秩序、枠組みを揺るがすような動きが広がる。在京各紙の元日紙面は戦後70年をそれぞれの視点で切り取った。

4紙が連載、独自ダネは2紙 

【1面トップ】朝日、毎日、日経、産経は連載企画を据え、読売、東京は独自ニュースを伝えた。昨年(連載企画2紙、独自ニュース4紙)に比べ連載企画が増えた。

 朝日 連載「鏡の中の日本 戦後70年」=戦後の日本が70年にわたって豊かさや平和を享受できたのはなぜか、それは世界と日本との関係を新たに築こうとした個人抜きには語れないのではないか、という問題意識に基づき、政治や経済といった大構えの視点ではなく、あえて具体的な個人の動きに焦点を合わせた。初回は日本人デザイナーの先駆けとして海外への道を切り開いてきた森英恵氏や高田賢三氏らの軌跡を取り上げた。

 毎日 連載「一極社会 東京と地方」=地方から東京へヒト、モノ、カネが流れ込む一極集中。これに伴って生じているさまざまな問題と、地方で芽生えている地道な活性化の取り組みを通じ、脱・一極社会のヒントを探る企画。元日の紙面(第4回)では、住民が無報酬で村道や農道を舗装し、浮いた資金で若者向けの格安公営賃貸住宅を建て、人口減に歯止めをかけようという長野県下条村の動きなどを紹介した。

 日経 連載「働きかたNext」=生産年齢人口が減り続ける一方、労働生産性は低いままの日本。育児や介護で働く時間が限られる「制約社員」も増え、もはや働いた時間で給料をもらう仕組みや長く勤めるほど退職金が有利になるといった制度は限界という観点から、新たな働き方を模索する企業や労働者の動きを伝える企画。初回は女性や外国人の活用の課題など、日本の職場の現状を総論的にまとめた。

 産経 連載「天皇の島から 戦後70年・序章」=戦後70年報道の皮切りとして「天皇陛下と日本」を考える企画。初回は、かつて日本の統治下にあり、米軍が「天皇の島」と呼んだというパラオ共和国のペリリュー島からのルポを中心に、太平洋戦争時に旧日本軍の守備部隊と米軍が同島で繰り広げた激戦の模様や、旧日本軍と島民とのエピソード、今なお島民の間に残る日本への特別な思いを伝えた。

 読売「ビットコイン不正操作 消失の99%は無断取引か 警視庁解析 マウント社管理を捜査へ」=インターネット上の仮想通貨「ビットコイン」の取引サイトを運営していた「マウントゴックス社」のシステムから大量のビットコインが消失した事件で、同社が主張する外部からのサイバー攻撃による消失は全体の約1%に過ぎず、残りはシステムの不正操作によって消失した疑いが強いことが、警視庁の解析によって分かったと報じた。

 東京「武器購入国に資金援助 防衛省、途上国向け制度検討 低利貸し出しや贈与も」=防衛省が、日本の防衛関連企業から武器を購入した途上国などを対象に、援助制度の創設を検討していると報じた。購入資金を低金利で貸し出すほか、政府自ら武器を買い取り、相手国に贈与する案も出ている。政府開発援助(ODA)とは別の枠組みとする方針で、武器輸出を原則認める防衛装備移転三原則決定を受けた輸出促進策の一環という。

節目の年、日本の在り方は

 【社説・論説】戦後70年の節目に、これからの日本はどうあるべきかを考察した。

 朝日「グローバル時代の歴史 『自虐』や『自尊』を超えて」=歴史には、国ごとの歴史(ナショナル・ヒストリー)と、世界全体の動きとして捉えるグローバル・ヒストリーがあるとした上で、「東アジアに垂れ込めた雲が晴れないのも、日本人や韓国人、中国人としての『自分』の歴史、ナショナル・ヒストリーから離れられないからだろう」と指摘。「自国の歴史を相対化し、グローバル・ヒストリーとして過去を振り返る。難しい挑戦だ。だが、節目の年にどうやって実りをもたらすか、考えていく支えにしたい」と説いた。

 毎日「戦後70年 日本と東アジア 脱・序列思考のすすめ」=戦後70年の日本を「えたいの知れない不安といらだち」が覆っており、その正体は「『アジアで一番』という序列意識の揺らぎ」と指摘。序列思考からの脱却は東アジア共通の課題であるとし、「日本の役割は『大国残像ナショナリズム』を振りかざし、過去の栄光を取り戻すことではない。優越主義によるアジア観を排し、中国・韓国と共生できる地域の未来を考えながら、東アジアの和解と連帯に率先して取り組むことであろう」と主張した。

 読売「日本の活路を切り開く年に 成長力強化で人口減に挑もう」=昨年末の衆院選で勝利した安倍政権に対し、「経済再生を最優先に、社会保障、外交・安全保障など政策課題への取り組みを、一段と加速させる必要がある」と求めつつ、内外の諸問題を点検した。「特に急を要する」とする成長戦略の強化については「産業の新陳代謝を促す規制改革を成長戦略の柱に据える手法は正しいが、中身は不十分」と注文を付ける一方、「成長戦略の充実は、人口減への対応としても極めて重要」との見方を示した。

 日経「戦後70年の統治のかたちづくりを」=政治、経済の両面で国際的な戦後秩序が揺らぐ中、「中国を排除した世界はもはやあり得ない」とし、「法の支配の原則のもと国際世論を背景に、今の秩序を維持し、それを強くしていくためにともに努力するよう引き入れていくしかない」と論じた。衆院選で自民1強体制が続くことになった国内については「与党3分の2体制のもとでの合意形成の仕組みを整えるときだ」とする一方、「戦後70年の今年、とりわけ歴史問題への配慮が必要になる」とクギを刺した。

 産経「年のはじめに 覚悟と決意の成熟社会に」=戦後70年の首相談話の「キーワードは『自立』『自助』であるべき」で、これは「国民の覚悟と決意と同義」とした上で、「これなくして難問の解決はできないにもかかわらず、今日の日本には欠けているようにみえる」と強調。「自立と自助の国」をめざすには憲法の改正こそが必要で、「環境は整いつつある。首相には、『その時』がきたならば、躊躇(ちゅうちょ)せずに決断することを強く求めたい」と主張した。

 東京「戦後70年のルネサンス 年のはじめに考える」=トマ・ピケティの「21世紀の資本」や河上肇の「貧乏物語」などを引き合いに、「グローバル経済が労働配分率を削減して資本家に利益を独占させるシステムだとしたら現代は新帝国主義と貧乏物語の時代の色彩を帯びます」とし、「資本から人間中心の社会を取り戻さなければなりません」と訴えた。また新聞の役割について、戦争中の翼賛報道を反省しながら、「その日々の営みが歴史の評価にも堪えるものでありたいと願っています」と結んだ。


 【主な連載企画】朝日=1面「鏡の中の日本 戦後70年」・社会面「Life五話」、毎日=1面など「一極社会 東京と地方」(12月27日から)・社会面「わかりあえたら 不寛容時代に」、読売=1面「語る 戦後70年」(1月3日から)・社会面「おせっかいですが…」(同)、日経=1面「働きかたNext」・社会面「戦後70 わたしたちの軌跡」(12月29日から)、産経=1面「天皇の島から 戦後70年・序章」・社会面「家族」、東京=1面「戦後の地層 覆う空気」(1月3日から)・社会面「分け合う心 ハシ先生のメッセージ」(同)

 【元日号ページ数】かっこ内の数字は2014年、13年の順
 朝日120(132、116)▽毎日76(76、80)▽読売112(104、104)▽日経104(108、100)▽産経80(80、86)▽東京56(56、56)(審査室)

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