5月12日付 成長にらみ積極関与論

中国依存には懸念も

 中国が主導して年内創設を目指すアジアインフラ投資銀行(AIIB)に世界の視線が集まっている。創設メンバーは57か国に及び、アジア開発銀行(ADB)に迫る陣容となった。日米が参加を見送ったのに対し、先進7か国(G7)からは英独仏伊が名を連ねた。戦後国際金融秩序の転換点との見方もある。3月から4月にかけての社説を点検した。

早期参加へ環境整備

 一般・経済紙で積極関与を掲げるのが日経だ。「欧州の先進国が加わり、広がりのある国際金融機関がアジアに誕生する以上、目をそむけ続けるわけにはいかない」とし、「積極的に関与し、関係国の立場から建設的に注文を出していく道があるはずだ」と説く。

 成長が続くアジアでは、毎年90兆円超のインフラ投資が必要とされ、既存のADBだけでは限界があるとの見方が強い。毎日も、「ADBなどとの協調を進めていくうえでも、日本は参加が必要だ。加盟する他の主要7カ国(G7)メンバーとも連携しながら、早期参加の環境を整えてほしい」と訴える。

 地方紙も、▽「日本が部外者のままでいいのだろうか。参加も含めて関与の仕方を真剣に模索するべきだ」(北海道)▽「このまま日本が手をこまねくなら後れを取ることにならないか。アジアの成長を取り込むのが本来、安倍政権の基本方針でもある」(中国)▽「アジア第2の経済力を持つ日本が加わらないのは不自然であり、得策ではない。(略)直接関与の方向性を追求すべきだ」(京都)など、積極関与論が相次いでいる。

 一方、朝日は「日本がAIIBに参加するにしても、見送るにしても、政府はその判断の根拠を、国民に説明する必要がある」と政府に情報発信を求めるとともに、「そのためにも、中国への関与は、希薄であってはならない」と指摘する。

公平性、透明性への疑念

 参加に強く異を唱えるのが産経だ。日米の孤立の指摘に対し、「誤りである。むしろ中国による恣意(しい)的運営への懸念が消えぬ中で参加を焦れば、禍根を残す恐れが強い」と強調。台湾を創設メンバーから外したことを引き合いに公正で適切な運営は期待薄とする。6月上旬に再開される日中財務対話で、「納得できる説明がないなら、あくまでも加入には慎重でなければならない」と喝破する。

 読売も、「国際金融機関にふさわしい公平性や透明性が確保できるのか」と疑問視する。4月16日の日米財務相会談を踏まえ、「AIIBが国際金融秩序の波乱要因とならないよう、日米がクギを刺したのは、妥当である」とし、「当面は、中国の出方と、創設メンバー国による協議の行方を見守ることが得策だろう。参加を焦る必要はない」と訴える。

 地方紙でも、佐賀のように中国依存は懸念が大きいとし、「米国の方針と離反することは難しく、しっかり利害を見極めてほしい」と主張する向きがある。環太平洋経済連携協定(TPP)とのリンク論に対する警戒もある。日本農業は「懸念するのは、『AIIBに参加しないなら、日本企業がビジネス上で不利にならないようにTPPの役割が一層重要となってきた』との見方が経済界で広がってきたことだ」と心配する。

外交力問う指摘も

 ただブロック紙を含め地方紙は関与論が大勢だ。「好むと好まざるとに関係なくAIIBは発足する。中国主導の運営体制に対し、外部からいくら注文を付けても実効性は望めないだろう。懸念があるのなら、参加して他の国々と連携しながら改善の道を探るべきである」(東京)という具合だ。実利を優先し、懸念があるなら中に入って改善を図ればいいというわけだ。

 将来の人口減を見据えた関与論もある。例えば、「人口減の日本は、この地域の需要を取り込むことが成長に欠かせない」(岩手日報)との主張がそれだ。

 外交力を問う見方もある。日米の対応について神戸は、「動きを読み誤った外交力が問われる事態」と指摘した上で、「中国が一段と力をつけ、米国が守勢に回る。目の前の変化を見据え、従来の延長ではない外交が、ますます求められる。(略)単なる『誤算』で済ましてはいけない」と力説する。琉球も、「対米追従は論外である。日本も主体的に判断すべきだ。その際は国益と併せて、AIIB参加によって日本が新興国に貢献できるか否かも基準にすべきである」と、主体性の発揮を求める。

 安全保障との切り離し論もある。「台頭する中国に対応するには、ヘッジ(防御)とエンゲージ(関与)のバランスが重要だとされる。安全保障で対峙(たいじ)しながらも、経済ではうまく関与し、共存共栄を図ることが可能だ」(西日本)という。

 6月の設立協定調印に向け、政府の判断が注目される。(審査室)

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